海上に大型のたこを並べれば、陸上を襲う豪雨を軽減できる可能性がある――。そんな研究結果を、千葉大や富山大などのチームがまとめた。2021年8月に九州北部や中国地方を襲った豪雨で試算すると、平均で5~10%、総降水量を少なくできたという。
激甚化する豪雨は、地球温暖化に伴い海面水温が上昇し、大気中の水蒸気量が増えて引き起こされると考えられている。チームは、幅200メートル、高さ300メートルの巨大なたこを海に設置し、上昇気流を起こして人為的に海上で雨を降らせ、大気中から水蒸気を取り除いて豪雨を防ぐ手法を考案した。
チームによると、風に向かって数十枚のたこを縦に並べると、風がたこを何度も越えて効果的に上昇気流が作れるという。
21年の豪雨のデータを使い、豪雨の1~2日前に21枚のたこを海上に置いたとして、コンピューターでシミュレーションした。その結果、九州北部の被災地では平均5~10%程度の降水量を低減できた。
ただ、その効果は場所によってむらがあり、かえって雨が強まるケースもあった。
15年9月の関東・東北豪雨では、70枚のたこを置いたとして試算した。すると、1日当たりの総雨量を60ミリ減らせたケースや、同68ミリ増えたケースが生じた。平均では同3ミリの減だった。
この豪雨は、東海地方へ上陸した台風18号によってもたらされており、チームは「台風を伴う豪雨のため現象のスケールが大きく、たこの効果が十分に発揮できなかった可能性がある」としている。
チームの小槻峻司・千葉大教授(気象予測学)は「気象現象は一つのきっかけがどう作用するか分からない性質がある。想定外の結果が起こらないように、今後は不確実性を下げる研究とともに、産業界とも連携し、実際にたこをどのように作るか検討したい」と話した。
成果は10月に東京都内であった国際シンポジウムで発表した。【渡辺諒】