第9回国際将棋トーナメント(日本将棋連盟主催)優勝者と藤井聡太名人(22)との記念対局が9日、東京都渋谷区の新将棋会館で指された。藤井名人は、角がない「角落ち」のハンディのある対局に臨み、トーナメント優勝の許諾さん(32)=中国=の積極的な攻めを受けて立ち、一瞬のミスを逃さずに退け、名人の貫禄を見せた。
「角落ち」で快勝、実力実感
トーナメントは3年に1回行われる「国際将棋フォーラム」のイベントの一つ。7日から世界45カ国・地域から参加した51人が優勝を目指して戦った。藤井名人は新型コロナウイルス禍の中、オンラインで行われた2021年に続いて記念対局に登場した。
対局後、報道陣に囲まれた名人は「角落ちの対局だったが、手を緩めることなく指すことができて楽しかった」と自身の実力を実感していた。海外へ将棋を広めるためには何が必要か、と問われると、外国語訳された戦術本などの充実を念頭に「対外的なコンテンツが足りないので、取り組んでいく必要がある」と課題を述べた。
中国では“将棋の神様”
一方、藤井名人と対局する機会を射止めた許さんは、北京市に住むチェスのインストラクター。中国将棋や囲碁などボードゲームを幅広くこなし、将棋歴は12年で五段の腕前。好きな棋士に、この日の大盤解説を務めた羽生善治九段(54)を挙げ、「AI(人工知能)が出る前の第一人者。今日、生で羽生九段を見て汗が噴き出た」と興奮気味。
藤井名人のことは「中国でも非常に有名で、将棋の神様。ユーチューブ動画でも見ている」。大会には「飛車」「龍王」と大きくプリントされたTシャツを着込んで出場していたが、藤井名人との対局では上着を着て“封印”し、名人への敬意を見せた。
攻めに出たところで藤井名人から見事なカウンターを食らってノックアウトされ、「自分の力を出せなかった」と名人の強さを痛感した様子だった。【丸山進】