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どんなに気をつけていても…認知症行方不明者の家族、切なる声吐露

毎日新聞 2024年11月11日 10時10分

 「どんなに気をつけていても、ほんの一瞬の隙(すき)にいなくなることがあるのが現実。『なぜ、ちゃんと見ていなかったのか』などの批判があるが、四六時中見ているのは不可能だと分かってほしい」。熊本市であった防災イベントで、長崎市のNPO法人「いしだたみ・認知症行方不明者家族等の支え合いの会」が、行方不明になった認知症の人の家族の切実な声を紹介した。【百田梨花】

 同NPOは10月19、20日、熊本市であった国内最大級の防災イベント「ぼうさいこくたい2024」(内閣府など主催)に出展。江東愛子代表理事(46)は会場で、中年女性に話し掛けられた。「認知症の父が勝手に出歩かないよう、自宅に鍵を掛けて閉じ込めている」。自らも長崎市で1年半前に行方不明になった父秀夫さん(74)を捜す江東さんは、じっと耳を傾けた。

 江東さんは、父が行方不明になった経験から家族が思いを共有する場を作ろうと8月にNPOを設立。これまでに家族から寄せられた声を今回、パネルで展示した。

 「妻が行方不明になり、やれることはやり尽くし、たまに息抜きをしたいけど周囲の人の目が気になる。こういう気持ちを分かってほしいし、吐き出せる場所がほしい。心身共に疲弊していくばかり」「GPS(全地球測位システム)を普段持たせていても、着の身着のまま出て行かれる場合もある。インターネットなどに『認知症の人にはマイクロチップを埋めろ』と書いてあるのを目にするとつらい」……。

 会場には、8月に静岡県で行方不明になった70代の弟を捜す横浜市の男性も訪れ、江東さんと思いを語り合った。

不明者、年1.9万人

 警察庁によると、行方不明になった認知症(疑いを含む)の人は10年で倍増し、2023年は全国で1万9039人。23年に死亡が確認された人は553人に上る。同NPOと共に出展した「認知症介護研究・研修東京センター」(東京都)によると、行方不明になった人の約6割は認知症の症状が軽く、江東さんの父秀夫さんも含め普段は一人で外出できていた。

 今年1月には「全ての認知症の人が、基本的人権を享有する個人として、自らの意思によって日常・社会生活を営むことができる」という基本理念などを定めた認知症基本法が施行された。

捜索から対策へ

 同センターの永田久美子副センター長は「基本法では、認知症があっても本人に基本的人権があり、望む外出を続けることができ、本人が持つ個性や能力を発揮して社会参加を続けることが重視されている」と説明。「従来の『行方不明になってからの捜索』から、行方不明にならず外出を続けられるための地域社会全体での外出支援や見守りといった対策への転換が求められている」と指摘する。

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