公立学校の教員に対して残業代を支払わない代わりに給料月額の4%を上乗せする「教職調整額」について、財務省は11日、業務削減を条件に段階的に引き上げるとする独自案を財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会に示した。これに対し、文部科学省は「財務省案は現場の努力のみで働き方改革を進めようとするものだ」と反論している。
文科省は教員不足の解消を目的に、概算要求で調整額の13%への引き上げと、教員定数の改善などを求めている。
11日に示された財務省案は、毎年の業務削減を条件として調整額を今後5年間引き上げ、最終的な支給割合を10%とするもの。将来的な残業時間は月20時間程度を目指す。達成されれば調整額を規定する教員給与特別措置法(給特法)の廃止を含め、月20時間を上限とした残業代支給の方策も検討するとしている。
財務省は過去の統計から「児童生徒当たりの教員数が増えても、残業時間は減少していない」と分析。その上で「教員増ではなく、負担感の大きい業務の抜本的な縮減を優先すべきだ」としている。
これに対し、文科省は財務省案が教員定数の改善にも否定的だとして「現場への支援が欠如している」と指摘。「教員を増やさずに業務縮減を給与改善の条件とすれば、必要な教育をすることがためらわれる」とし、教育の質の低下につながるとの見方を示した。
給特法廃止と残業代支払いについては「時間外の業務に逐一、管理職の承認が必要になり、教師が創意工夫を発揮しにくくなる」と反発。残業代が上限を超えた場合の費用は自治体が負担するため「自治体の財政力の差によって教育格差が生じる」と言及した。【斎藤文太郎】