「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん(当時77歳)に致死量の覚醒剤を摂取させて殺害したとして、殺人などの罪に問われている元妻の須藤早貴被告(28)の被告人質問が11日、和歌山地裁であった。被告は野崎さんが「死にたい」と漏らしていたことを踏まえ、「自殺の可能性もあると思った」と述べた。
被告人質問は8日に続き2回目。この日は弁護側と検察側が質問した。被告は無罪を主張している。
前回の公判で被告は、野崎さんから覚醒剤の購入を頼まれ、現金20万円を渡されたと語った。この日の質問に対して「(野崎さんと)初めて会った時にも覚醒剤のことは聞いた」と主張。「量を間違えて死ぬこともあると思った」とも述べた。
購入を依頼された経緯を捜査段階で明らかにしなかった理由を問われると、「人殺し扱いだったから余計に疑われるのが怖かった。信じてもらえないと思っていた」と話した。
死亡前の野崎さんの様子については、愛犬が死んだことを悲しんでいたと振り返り、「死にたい」と度々口にするようになったと説明。自殺の可能性についても「なくはない」と述べ、自らは死亡に関わっていないと強調した。
一方、被告は事件前から「完全犯罪」や「老人 死亡」などとインターネット上で繰り返し調べていたとされる。これらの検索・閲覧履歴については「昔から猟奇殺人や不気味なものに興味があった」と説明した。
野崎さんの死後、「警察に余計なことを言わないで」と友人らに告げていたことも明らかになっており、「プライバシーが侵害されていたので生活が壊されると感じた。証拠隠滅の意図はない」と語った。
被告人質問は15日にも予定されている。【藤木俊治、駒木智一、安西李姫】