化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長らの起訴が取り消された冤罪(えんざい)事件で、警視庁公安部外事1課が起訴取り消し後の2021年8月、捜査の問題点を検証するアンケートを捜査員に実施していたことが判明した。だが、アンケートの存在を知った警察庁幹部に外事1課長(当時)が叱責され、課長は「回答は廃棄した」とこの幹部に報告したという。捜査員にも回答は共有されず、アンケートが生かされることはなかった。
大川原化工機の社長ら3人は20年3月、軍事転用可能な装置を不正輸出したとして、外為法違反容疑で逮捕、起訴された。しかし、東京地検は初公判4日前の21年7月30日、起訴内容に疑義が生じたとして起訴を取り消した。
この捜査を巡っては、東京地裁が23年12月、警視庁公安部と東京地検が必要な捜査を尽くさなかったとして「違法」と認定し、東京都と国に計約1億6200万円の賠償を命じた。都・国側、大川原化工機側の双方が控訴し、東京高裁で審理が続いている。大川原化工機側は記者会見などで「捜査の検証」を警視庁や地検に求めている。
またアンケートについては、9月の都議会の一般質問でも取り上げられた。当時の五十嵐衣里都議(現衆院議員、立憲民主党)から実施の有無や回答内容を尋ねられた緒方禎己(よしみ)警視総監は、訴訟が続いていることを理由に明確な回答を避け、実施の有無や内容は不明だった。
毎日新聞はこのアンケートを関係者から入手した。その詳細と、その後の警察内部での対応が明らかになるのは今回が初めて。【遠藤浩二】