自動車運転処罰法に定められている危険運転致死傷の要件見直しに向けて議論している法務省の有識者検討会(座長・今井猛嘉法政大教授)が13日開かれ、高速度運転や飲酒運転に「数値基準」を新設するとの考え方を盛り込んだ報告書案が示された。適用のハードルが高いという批判を踏まえた形だが、具体的な数値までは明記しなかった。
検討会は今後、報告書の取りまとめに向けた詰めの協議に入る。法改正の必要ありと判断されれば法制審議会(法相の諮問機関)に諮問されるとみられる。
危険運転致死傷は法定刑の上限が懲役20年で過失運転致死傷より重く、進行の制御が困難な高速度▽アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態▽赤信号を殊更無視――といった8種類の走行行為を規定している。ただ、速度やアルコール濃度がどの程度なら該当するのかという明確な基準はない。
2月に始まった検討会では委員らが、法定速度を大幅に上回っても道路をはみ出さずに走行できていれば、「制御が困難」とみなされないケースを問題視。飲酒運転についても「正常な運転が困難」を総合的に判断する実務上の難しさが指摘された。
報告書案はこうした課題をクリアするため、高速度運転については「制御が困難」とは別に新たな高速度の数値基準を設け、飲酒運転に関しても「正常な運転が困難」の規定の中に数値基準を定める手立てが考えられるとした。危険運転致死傷の適用対象となる具体的な数値基準については複数の意見が出ている。
一方、検討会は、「ながら運転」を危険運転致死傷に加えるべきかも審議してきた。ただ、運転しながら注視する対象はスマートフォンやカーナビのほか、道路沿いの電光掲示板や外の景色も想定される。中には、災害情報や渋滞情報のように悪質性が低いものも含まれうるため、報告書案は「慎重な検討が必要」との表現にとどめた。危険運転致死傷の法定刑の引き上げについても踏み込んでいない。【三上健太郎】