原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定に向けて北海道寿都町で進む「文献調査」を巡り、町内の大部分が処分場建設の不適地となる可能性があると有識者が指摘した。北海道教育大の岡村聡名誉教授(地質学)らの調査で明らかになった。最終処分の実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)は、文献調査の次のステップである概要調査以降に詳細を調べる意向を示しているが、概要調査の対象から外される要件の一つである「第四紀火山」が町内にある可能性が高まった。
岡村名誉教授らが調べたのは町北東部の磯谷溶岩。7月末から8月までに試料を採取し、民間の分析機関にサンプルを送付した。
10月半ばに判明した結果によると、磯谷溶岩の活動年代は210万~330万年前となる。約258万年前以降に活動した第四紀火山に該当する可能性を示した。
第四紀火山の活動の中心から約15キロ以内は、処分場建設の対象から外れることになる。調査によると、寿都町の陸地で適地として残るのは西部と南西部の一部になる。
NUMOは2月に公表した文献調査報告書案で、磯谷溶岩について、年代測定などがされていないことから概要調査以降に詳細を調べる意向だった。
今回の調査で磯谷溶岩の活動年代の中央値は270万年前となり、岡村名誉教授は「第四紀だと断言はできない」とする。一方、NUMOは寿都町と同時に進める神恵内村の文献調査の報告書案で、年代測定の中央値が290万年前だった「珊内(さんない)川中流の岩脈(がんみゃく)」の誤差を60万年として、最新活動年代が230万年前になると判断した。第四紀の可能性が高く、概要調査から除外する方向だ。磯谷溶岩も同様に最新の活動年代を当てはめれば、処分場の適地でなくなる。
岡村名誉教授らは、磯谷溶岩分布域にある山頂部の周辺で、火口近くに見られる複数の火山噴出物を確認した。「山頂部やその周辺が、火口の可能性が高い」と指摘する。
NUMOは毎日新聞の取材に「(岡村名誉教授らが10月に日本火山学会で)発表した事実は把握しているが、口頭だったと聞いている。品質が確保され、一般的に入手可能なデータを活用するため、学術論文になれば調査に反映させる」と説明した。今秋以降にまとめる予定の文献調査報告書を巡っては「文言の訂正などの最終調整中で、新たな知見を盛り込む段階でない」とした。
岡村名誉教授は「地層処分の観点から磯谷溶岩が避けるべき場所であることは明らか。文献調査に盛り込むべきだ」と話した。【片野裕之】