いやぁ、懐かしい。母親に手を引かれ、ワクワク気分だった小さな頃を思い出す。それこそ時間を忘れて夢中で遊んだものだ。松坂屋高槻店(大阪府高槻市)の「屋上遊園スカイランド」は、今では関西唯一というデパートの屋上遊園地。ちびっ子たちにとってはワンダーランド、大人には昭和感あふれるレトロ空間だ。【中川博史】
アンパンマンにピカチュウ、ドラえもんやきかんしゃトーマス。子どもに大人気のキャラクター遊具が並ぶ。平日の午前中で薄曇りという天候にもかかわらず、10組ほどの親子連れらが訪れていた。
「土日祝日になると、たくさんの人でにぎわいますよ。人気の遊具は順番待ちが出るほどです」。そう説明してくれたのは同店業務推進担当の福井邦男さんとスカイランドの“店長”の梁学明さん。
スカイランドは1979年の同店オープン当時から営業しているそうだ。屋上のほぼ一面を占め、広さ約1200平方メートルの敷地に、レールの上を走る汽車やゴーカートなど33台の乗り物が備わっている。屋内にはクレーンゲームや出てきたワニをたたくゲームなどもあって、楽しみ方はよりどりみどり。
デパートの屋上遊園地は高度経済成長期の前後に盛況だったが、その後は郊外の大型ショッピングセンターの建設やレジャーの多様化、幼年人口の減少などによって徐々に姿を消していくこととなった。今では全国で残っている屋上遊園地は数カ所しかないようだ。
何がいいって、気軽に楽しめること。普段の生活の延長なのだ。「さあ、行くぞ!」と意気込む必要はない。買い物のついでで何ら構わない。料金も100~200円と安いので、お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんの懐にも優しい。
この数年、客足が増えているそうだ。物珍しさに加え、若者にとっては“映えスポット”にもなっていて、メディアなどで取り上げられる機会が増えたことが影響しているらしい。地元だけでなく、近隣や遠方からもうわさを聞きつけて客がやってくるのだという。
20年、30年と使い続けている遊具も少なくない。そこは日ごろの手入れのたまもの。ただ、遊具を製造したりメンテナンスを請け負ったりする会社がどんどんなくなっているのが悩みの種なのだとか。
豪華なアトラクションも魅力的ではあるけれども、ノスタルジーを感じる屋上遊園地にはまた違った趣がある。せちがらいご時世、そこでは穏やかに、ゆったりと時が刻まれ、大切な家族の思い出が育まれていく。
■松坂屋高槻店 屋上遊園スカイランド
営業時間は午前10時から日没まで。雨天の場合は休み。元日と1月2日休園。大阪府高槻市紺屋町2の1。JR高槻駅から徒歩1分、阪急高槻市駅から6分。電話(050・1783・3000=代表)。