死刑制度のあり方を議論してきた民間の有識者懇話会(座長・井田良中央大大学院教授)は13日、死刑制度の問題を調査して、存廃や改革・改善を検討することを国会と内閣に求める報告書をまとめた。現行の死刑には問題があり、国民の多くが死刑の存置をやむを得ないと考えているとしても、現状のまま存続させる理由とはならないと指摘した。報告書は政府と衆参両院に提出される。
報告書は、国民が死刑を支持する理由として、犯罪被害者の無念と悲しみに共感するからだと分析。ただ、被害者支援の充実と死刑存廃の議論は本来、別問題であり、死刑の是非に関わらず被害者支援のあり方に立ち入って検討する必要があるとした。
また、死刑廃止が国際的な潮流となる中、執行を続ける日本の国益が損なわれている疑いを挙げ、死刑に犯罪抑止力があるとする考えについても「科学的な証明はない」と言及した。
凶悪犯罪やテロに死刑なしで対応できるか、国民が不安を抱いていることは認めつつ、代替刑の創設や新たな捜査手法の採用でこうした不安を取り除けるか、考える必要があるとした。
さらに、「袴田事件」をはじめ、確定死刑囚が再審無罪とされた過去の冤罪(えんざい)事件にも触れ、善良な国民が処刑される最悪の事態が起きる危険性を踏まえれば、そうした可能性を排除する特別な手続きの制度化を検討すべきだと述べた。
報告書は、死刑見直しの具体的な結論が出るまでは執行を停止することも求めている。記者会見した井田座長は「具体的に問題点を示しており、早急に議論を始めてほしい」と述べた。
懇話会は日本弁護士連合会が事務局を務め、林真琴元検事総長や中本和洋元日弁連会長ら16人が参加。2月から会合を重ねてきた。【三上健太郎】