滋賀県警は13日、県内12警察署のうちの7署で、40年以上にわたり事件の証拠品3829点を放置していたと明らかにした。これらの証拠が関係する305事件で公訴時効が成立していた。証拠品の扱いを巡っては、これまでも各地の警察で管理のあり方が問題となってきた。
大阪府警では2012年、福島署で未解決事件の遺留品のたばこの吸い殻を紛失し、別の吸い殻を証拠として捏造(ねつぞう)したことが明るみに出た。その後も羽曳野署で、傷害事件の逮捕状請求書など20以上の事件に関連した捜査書類や証拠品が段ボール箱に詰められ、署内の機械室などに放置されていた問題が発覚した。
これらの不祥事を受けて府警は14~16年、府内の全65署(当時)で管理状況を一斉に点検。その結果、61署で1975~2012年に起きた計2270事件について、公訴時効を迎えたまま放置されていたことが判明した。現場の遺留物や関係者の調書といった証拠品計8345点が、各署の倉庫などに置かれたままになっていた。罪種別では窃盗が最も多かったが、殺人などの重大事件に関するものも見つかった。
府警の調査では、保管場所が手狭なことや、人事異動時の引き継ぎがされていなかったことが原因に挙げられた。
府警では証拠品の管理体制を随時見直し、12年に大阪市内に「証拠品管理センター」を設置。DNA型鑑定に使う重要証拠などを一括管理するようになった。さらに14年には全署の総務課に証拠品管理係を置くとともに、証拠品を庁内ネットワーク上で一元管理する「総合捜査支援システム」を導入。時効半年前に警告を表示し、放置を防ぐ取り組みを進めている。
警視庁でも公訴時効を迎えた事件の証拠品など計約1万点が送検されていなかったことが分かったほか、福岡県警でも同様の事例が明らかになっている。
証拠の放置は「評価適正か検証できず」
渡辺修・甲南大学名誉教授(刑事訴訟法)は「警視庁や大阪府警でずさんな証拠管理が明らかになった10年代以降、各警察署で証拠品の管理規定の見直しを行い、再発防止が図られてきたはずだ」と語り、滋賀県警でのずさんな管理を批判する。刑事訴訟法は事件の捜査資料と証拠品は原則、検察庁に送致しなければならないと定めており、「滋賀県警は捜査は尽くしたとしているが、内部で放置していては証拠の評価が適正だったのか検証できない。客観的証拠を重視する刑事司法の流れを無視しており、同様の事例がないか警察庁は全国の警察に点検させるべきだ」と指摘した。【二村祐士朗】