厚生労働省は、患者が医療機関で支払う窓口負担に限度額を設ける「高額療養費制度」の自己負担の上限を引き上げる検討に入った。社会保障費を削減し、現役世代の保険料負担の軽減を図りたい考えだ。近く本格的な議論を始め、年内に結論を出す。
制度は、手術や入院などで患者の窓口負担が大幅に増えた場合、所得に応じて決められた上限を超えた分を公的医療保険制度で払い戻す仕組み。前回の見直し時に比べ、世帯収入が約16%増加し、消費者物価指数も約8%上昇していることから見直しを決めた。
見直しの対象となるのは、70歳未満の人について五つの所得区分ごとに定めた負担限度額だ。現在検討している案は、最上位の区分(年収約1160万円以上)の現行25万2600円から5万400円、2番目の区分(同約770万~約1160万円)の同16万7400円から3万3000円それぞれ引き上げる。引き上げ幅は20%ほどだ。
一方、真ん中の層(同約370万~約770万円)は同8万100円から5400円、平均以下の所得階層(同約370万円以下)は5万7600円から2400円、最も所得が低い住民税非課税世帯は3万5400円から900円の引き上げにとどめる。所得の低い層の引き上げは緩和する。70歳以上の外来の自己負担上限額や年間の負担上限額についても見直しを検討する。前回の見直しでは与党内にも反発があり、金額は変わる可能性がある。
2025年度中の施行を目指し、26年度には所得区分を細分化することも検討している。【神足俊輔、阿部絢美】