陸上自衛隊の輸送機V22オスプレイが沖縄県・与那国島で離陸直後に地面に接触して損傷した事故で、陸自は14日、揚力を得るためのスイッチを押し忘れるなど操縦士のミスが原因とする調査結果を発表した。機材上の不具合は確認されていないことから、陸自は操縦手順の徹底を図り、事故で見合わせていた飛行訓練を15日以降、段階的に再開するとしている。
事故は10月27日午前、与那国駐屯地で日米共同訓練中に発生。陸自のオスプレイ1機が空中でバランスを崩し、機体の一部が地面に接触した。陸自隊員ら搭乗者16人にけがはなかった。
陸自の調査結果によると、オスプレイは離陸時、エンジン出力やブレード(羽根)の回転数を上げる「インテリム・パワー・スイッチ」をオンにするが、事故当時は正副操縦士が押し忘れていた。このため上昇に必要な揚力を得られず、ホバリング(空中停止)状態から前進する際に「予期せぬ高度の低下」が起きた。操縦士は離陸を中止して接地を試みたものの、エンジン出力を下げるなど適切な操縦方法を焦って取れず、機体が再び浮上。姿勢を制御できずに傾き、左翼下部が地面に接触した。
スイッチの押し忘れについて操縦士は、離陸直前に搭乗者が1人増えたことや飛行計画からの遅れに「気を取られた」などと釈明したという。再発防止に向けて陸自は、操縦席の天井に設置されているスイッチに目立つような目印を施すほか、正副操縦士が離陸時に手順漏れがないかどうかを確認し合ったり、高度低下時に適切な操縦をしたりできるよう教育を徹底していく。
陸自トップの森下泰臣陸上幕僚長は14日の定例記者会見で「V22の運用に懸念や不安がある中、事故を深刻に受け止めている。運用への信頼が失墜しかねない状況になったのは大変遺憾。飛行の安全に万全を尽くす」と述べた。
飛行訓練は輸送部隊が拠点を置く木更津駐屯地(千葉県)から再開する。事故機については、与那国駐屯地で調査を続けるという。【松浦吉剛】
佐賀知事「再発防止へ対応を」
防衛省は陸自木更津駐屯地(千葉県木更津市)に暫定配備しているV22オスプレイを2025年7月に佐賀空港(佐賀市)に配備する予定で、今回の事故原因について14日に佐賀県側に説明した。その後の記者団の取材に、山口祥義(よしのり)知事は「絶対に安全ということはない。大事なのは起きたことに一つ一つ丁寧に取り組むことだ」と強調。その上で今回の事故について「人為的なミスなので教育訓練の問題は何より大切だ。しっかりと再発防止に向けて対応いただきたい」と安全対策の徹底を求めた。【五十嵐隆浩】