女性の転職市場に異変が起きている。転職者はこの10年で5倍に増え、40代では17倍と加速している。かつては男女とも「35歳が転職の限界」といわれたが、年齢の壁はなくなりつつあり、家事や育児の経験も転職先の評価対象になっている。
転職支援サービス「リクルートエージェント」によると、2023年の女性全体の転職者数は13年と比べ5倍に増加。契約・派遣社員の女性が正社員になったケースに絞ると5・8倍に急増した。転職で賃金が1割以上アップした人の割合も4割を占めた。
中でも40代の転職者は10年で17・3倍に拡大。サービスを運営するリクルートの担当者は「13年当時は40代で転職する女性は少なく、数字が大きく出ているという事情はある」というものの、それでも「人材不足を背景に、企業が求めるターゲットは広がっている」と話す。
40代の転職先としては、事務系専門職が約4割。ほかにITエンジニアや一般事務も多いという。「何かしら積み上げてきたものがあれば、年齢が高くなっても転職は可能。人材不足が解消されない状況の中、この傾向は続くのではないか」とみている。
一方、家事や育児の経験が採用時のアピールポイントにつながるケースもある。
例えば、家事と育児を同時に進めるための「マルチタスク対応力」や、地域活動や学校行事を通して身につく「連携力」、子供の年齢や理解度に合わせることで培われる「コミュニケーション能力」など、ビジネスに生かせるスキルは多い。実際、家事育児に重心を置いてきたため仕事のブランクがある、職歴が乏しいという人でも、こうした経験が評価され、採用に至った事例も出てきている。
リクルートは「(アピールする)スキルや強みは、力を入れたことや頑張れたことから考えていくと見つかりやすい」と助言する。【嶋田夕子】