人気作家らが俳優として舞台に立つ「なにげに文士劇」の公演が16日、大阪市北区のサンケイホールブリーゼであった。黒川博行さんや朝井まかてさんら、主に関西と九州在住の16人が出演し、東野圭吾さんの青春ミステリー小説「放課後」を舞台化。「表現のプロ」である文士らの体当たりの演技に、満席の観客から大きな拍手が送られた。
黒川さんを実行委員長に、朝井さん、東山彰良さん、澤田瞳子さんと4人で実行委員会を結成し、今年8月から稽古(けいこ)を重ねてきた。
明治から130年以上の歴史がある文士劇だが、現在は岩手県の「盛岡文士劇」を除いて上演が途絶えており、大阪では実に66年ぶりの復活。注目度は高く、約900席のチケットは発売後すぐに完売した。
「放課後」は東野さんのデビュー作。劇作家・演出家の村角太洋さんが舞台化の脚本・演出を手掛けた。参加した作家は他に、一穂ミチさん▽上田秀人さん▽門井慶喜さん▽木下昌輝さん▽蝉谷めぐ実さん▽高樹のぶ子さん▽玉岡かおるさん▽湊かなえさん▽矢野隆さん。画家の黒川雅子さん、編集者の小林龍之さん、書店員の百々典孝さんも出演した。
文士劇は1890年に作家の尾崎紅葉らが始めたとされ、その後、文芸春秋による「文春文士劇」が小林秀雄や三島由紀夫らの出演で人気を博した。大阪では1950年代に、画家の鍋井克之が文士や画家を集めて「風流座」として公演した記録がある。【関雄輔】