11月19日の国際男性デーに合わせ、男性の健康や生活改善について啓発する企業や団体が増えている。伝統的な「男らしさ」とは異なる多様な男性像を考えるイベントも多い。ただ、国際女性デー(3月8日)と比べると、世の中の関心はまだまだ低そうだ。
国際男性デーは、1999年にカリブ海の島国・トリニダード・トバゴで男性の健康やジェンダー平等を目指して始まったとされる。欧米などで啓発イベントが広がり、国内でも近年、企業や自治体などがさまざまな催しを企画するようになった。
最近では、仕事や競争、強さに重きを置く伝統的な「男らしさ」に縛られない男性像を模索する人も多い。多様な生き方を選ぶうえで「男らしさ」を問い直す動きも広がりつつある。
こうした中、男性の健康や暮らしに関して、企業も啓発に乗り出している。
ユニ・チャームは、男性の尿漏れについて「5人に1人が経験し、その半数はケアしていない」とする調査結果を発表した。リクルートも男性の美容に関する調査結果を公表し、髪形や肌への意識でジェンダーレス化が進んでいる実態を報告した。
男性育休や男女格差解消と絡めた発信も。人材サービスのパーソルホールディングスは、男性社員らによる育児のクイズ大会を開催。製薬大手のファイザーは、男性幹部らを対象に、生理痛について学ぶ研修を実施した。
プレスリリース配信を手がける「PR TIMES」によると、「国際男性デー」のワードを含むリリースは2021年から増え始めているものの、24年(18日午後5時点)は12件。これに対して「国際女性デー」は24年(同)に約500件で、認知度には大きな開きがありそうだ。
リクルートワークス研究所の筒井健太郎研究員によると、育児など他者へのケアを重視する男性も増えており「伝統的な男性像との間で生きづらさを抱える男性もいる。多様な男性像を認め合う社会の実現のために啓発は重要だ」という。
そのうえで「企業で進むダイバーシティーの取り組みは、まず女性が主役となっている。管理職の女性比率拡大は企業の経営課題であり、格差解消において女性の優先順位が高い状況は続く。男性の生きづらさは見えにくく、年に1度の男性デーも注目されてほしい」と話す。【久野洋】