文部科学省と厚生労働省は18日、狙った遺伝子を書き換えられるゲノム編集を施したヒトの受精卵(ヒト胚)について、ヒトや動物の胎内に戻すことを禁止し、違反した場合には罰則を設ける方針案を、この日あった両省の専門委員会に示した。国内初の法規制に向けた具体的な検討が始まる。
中国人研究者が2018年、ゲノム編集を施したヒト胚から「ゲノム編集ベビー」を世界で初めて誕生させたと発表し、世界的な批判を受けた。日本ではこうした行為を禁じる指針はあるが、法規制はなされておらず、未然に防ぐ狙いがある。
ゲノム編集したヒト胚から子どもを作ることは、生命倫理の根幹に関わる問題として、世界で規制の動きが強まっている。望み通りの能力や容姿を持った子どもを作る「デザイナーベビー」の誕生や、遺伝子改変によって思わぬ遺伝性の病気を生みかねないためだ。
WHO(世界保健機関)の諮問委員会も21年、こうしたヒト胚の臨床利用を禁止すべきだとしている。
一方、日本の指針では、不妊治療や遺伝子疾患の解明などの基礎研究に限って認め、子宮や胎内に戻したり、受精後14日を超えて培養したりすることを禁じている。
この日の方針案には、ゲノム編集を施したヒト胚の作製にあたり、あらかじめ作製方法や研究内容を記載した計画書を届け出ることや、60日間の作製・使用の禁止期間を設け、その間に主務大臣が審査をすることなども盛り込んだ。【渡辺諒】
ゲノム編集
特定の遺伝子を切断して機能を失わせたり、外来の遺伝子を組み入れ新たな機能を持たせたりする技術。従来の遺伝子組み換え技術が、狙った遺伝子だけを改変することができないのに比べ、より高い精度で改変できる。手法を確立した米仏の研究者は2020年にノーベル化学賞を受賞した。ヒト胚に用いることは各国がさまざまな制限をしており、子宮に戻したり子どもを作ったりすることは禁じている。