就職活動中の学生らに対するハラスメントを防止する措置を企業にどこまで求めるかを巡る議論が、厚生労働省の審議会で続いている。女子学生らにわいせつな言動をするセクシュアルハラスメント(セクハラ)は対象とする方針だが、圧迫面接などパワーハラスメント(パワハラ)などが疑われる行為まで広げるかについては意見が分かれている。厚労省は年内に議論をまとめ、来年の通常国会に関連法案の提出を目指している。
労働界と経済界の代表らが委員を務める厚労相の諮問機関・労働政策審議会で議論中だ。就活中のセクハラについては、2019年に大手企業の社員がOB訪問に来た女子学生にわいせつな行為をしたとして逮捕され、社会問題化した。同様の事案が相次いだことから、審議会の議論でも労使ともに企業にセクハラ防止対策を義務づけることでおおむね一致した。
就活生らに向けた相談窓口の設置や面談の際のルール策定のほか、状況に応じた謝罪など、企業が講じるべき対策の具体案も示されている。対象は新卒の就活生だけでなく、インターンシップ中や中途採用の求職者も含める。
労働者側の委員は就活セクハラに加え、高圧的な態度で接する圧迫面接や中途採用者へのマタニティーハラスメント(マタハラ)など就活の場面における全てのハラスメントへの対策を義務化するよう求めている。
一方で、使用者側の委員は就活セクハラ以外の対策には慎重な姿勢だ。現行法でパワハラと認定するには職場内での優位性などが必要で、上司などが想定される。仮に暴言などがあったとしても就活生とはこうした関係性になく、認定が難しい可能性もある。審議会の議論でも、有識者の委員が業務への適性を判断するため、あえて威圧的な質問をすることもあると紹介し、線引きの困難さを示唆した。
厚労省は、職場内でのセクハラを禁じる男女雇用機会均等法か、労働施策総合推進法の改正を検討しており、年内にも結論を出す見通しだ。【塩田彩】