兵庫県の斎藤元彦知事がパワーハラスメントなどの疑惑を文書で告発された問題で、県議会は22日、10月24、25日に非公開であった調査特別委員会(百条委)の録画を公開した。告発文を作成し、県の窓口に公益通報した元局長の処分について、井ノ本知明・前総務部長は、公益通報の調査結果を待つよう斎藤氏に進言したと証言。了解を得たが、その後、斎藤氏の指示で前倒しを検討したという。
斎藤氏は9月の百条委で「進言を受けた記憶はない」と否定していた。百条委では別の県職員が「調査結果を待つよう県幹部に進言し、知事も了解したと伝えられた」と証言していたが、「知事に直接進言した」との証言は初めて。
問題は、元県西播磨県民局長(7月に死亡)が3月に斎藤氏に関する七つの疑惑を指摘した文書を県議らに送付。斎藤氏は3月27日、内容は事実無根だとして元局長の懲戒処分を検討していると明らかにした。元局長は4月4日に同じ内容を県の公益通報窓口に通報した。
公開された録画によると、井ノ本氏は「公益通報の調査が終わるまで(元局長の)処分を待つべきだと知事に進言し、了解を得た」と証言。進言した理由について、人事当局との協議で「今処分してしまうと公益通報を受けたから処分した、との誤解を受けかねないという意見があった」とした。
しかし、その後、斎藤氏から「(自身に対する批判の)風向きを変えたい」と言われ、処分の前倒しを検討したという。井ノ本氏は「(知事には)騒がしい状況を早く鎮めたい思いもあったと推察し、(前倒しを)指示として受け取った」と述べた。
人事当局は弁護士に相談し、調査未了の段階での処分も「法的に可能」との回答を得て、調査を続行。5月7日、文書は「誹謗(ひぼう)中傷にあたる」と認定し、元局長を停職3カ月の懲戒処分にした。
一連の経緯について、斎藤氏は9月の百条委で、部下からの進言を「記憶がない」と証言。公益通報の調査結果を待たずに処分できないか検討するよう指示したかについては「記憶上、指示はしていない」と述べていた。
10月24、25両日に開かれた百条委では証人として出席した片山安孝元副知事が関係者の個人情報に言及したため、尋問は中止に。百条委の奥谷謙一委員長は「個人のプライバシーに関わる情報は情報公開条例に基づいて最大限配慮することになっている」と説明。録画でも個人情報に関わる発言部分は非公開とした。【栗田亨、中尾卓英】