プラスチック汚染対策に特化した初の国際条約制定を目指す政府間交渉委員会の最終会合が25日、韓国・釜山で開幕する。各国間で意見の隔たりが大きいプラ製品の生産規制の是非などについては詳細な議論を先送りし、条約の完成を優先させる案も浮上しているという。複数の交渉関係者への取材で判明した。
国連環境計画の意思決定機関「国連環境総会」は2022年3月、海洋以外も含めた環境汚染根絶のため、法的拘束力を持つ国際条約を作ることを盛り込んだ決議を採択。24年中の策定を目指し、政府間交渉委員会の会合がこれまで4回開催された。
交渉委のルイス・バジャス議長(エクアドル)が10月に各国に示した条約素案には、各国にプラスチックの環境中への流出防止策を取ることを義務付けることが盛り込まれた。一方、プラ素材・製品の生産段階の対策については、条文を設けることは想定しているものの詳細な記載は避けた。
環境省によると、欧州連合(EU)などが製造や使用段階の規制を求めているが、プラ原料の石油を輸出する産油国を中心に反対している。複数の交渉関係者によると、最終会合では、プラごみの適切な管理や各国の事情に応じた対策強化に関する条文案を中心に交渉を進めることが検討されている。生産規制などについては条文案に詳細を書き込まず、条約発効後に改めて協議する可能性もある。
ブラジル・リオデジャネイロで今月開催された主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の首脳宣言には「プラ汚染を終わらせる決意」が盛り込まれ、条約交渉を年内に終わらせることを改めて確認した。最終会合で条文案に合意できれば、25年中にも外交会議で採択される見通し。
経済協力開発機構(OECD)によると、海洋など環境中に流出するプラスチックは年2200万トン(19年時点)に上る。途上国などを中心にプラごみを含めた廃棄物対策が不十分なことが最大の要因とされ、条約で流出防止策が義務付けられることで、各国で廃棄物管理や流出防止といった対策が進むことが期待される。【鈴木理之】