2024年度上半期(4~9月)の全国のクマ出没情報件数が1万5741件(前年同期比2350件増)に上り、現行の調査となった16年以降で過去最多だったことが環境省のまとめで明らかになった。冬眠前の今の時期はクマがエサを求めて人里へ下りてきやすいため、同省などは引き続き注意を呼びかけている。
出没情報件数には、非公表の北海道は含まない。九州・沖縄はクマが生息していないため調査対象外。
環境省鳥獣保護管理室によると、昨年度はクマのエサとなるドングリを実らせるブナ科堅果類が東北地方で大凶作となり、10~11月に出没数が激増。その結果、年間の出没情報(2万4345件)と人身被害(219人)は、ともに過去最多を記録した。
今年度は目撃情報が増えた一方、人身被害は上半期で67人にとどまる。同省は昨年度に出没が相次いだことを踏まえ、「警戒意識の高まりから、今年度上半期は通報が増えたのではないか」とみている。
ヒグマの生息地である北海道でも、目撃件数が増加している地域がある。
北海道警などによると、今年の道内のクマに関する通報件数は2556件(21日現在)。4055件に達した前年を下回る見込みだが、根室市では過去最多だった昨年度の100件を上回る119件(同)の情報が寄せられている。
同市の担当者は「個体数が増え、山中でエサの獲得競争に負けたクマが市街地に下りてきているのでは」と推考。一方で、今年4月、市内の林道で軽トラックがクマに襲われる動画がSNSなどで拡散し、住民らが敏感になっていることも通報増につながったとみている。
道によると、統計の残る1962年以降のクマによる人身事故件数は計158件(同)で、死者59人、けが人121人。近年では23年10月、福島町で登山中の2組がクマに遭い、男子大学生が亡くなった。
クマが冬眠する12~3月は例年、被害が比較的少なくなる。ただ、1915年12月には7人がクマに殺害され、獣害史上最大の惨劇とされる「三毛別羆(さんけべつひぐま)事件」が北海道で起きた。秋に十分食べることができず、冬ごもりの機を逸したクマは「穴持たず」と呼ばれ、空腹の焦りといら立ちから冬季に人間を襲うなど凶暴性を発揮しやすくなるため、注意が必要だ。【伊藤遥】