国内外の海女が集う「全国海女サミット2024」が22日、志摩市商工会館(三重県志摩市阿児町鵜方)で開かれた。鳥羽、志摩の両市をはじめ福岡など7県や韓国から55人の海女を含む水産関係者ら約120人が参加し、海女漁業の現状を共有したほか、地震や豪雨などが続いた石川県輪島市の海女が厳しい現状を訴えると、各地の海女が同じ仲間として寄り添おうとする姿も見られた。
サミットは各地の海女の交流を目的に2009年から始まった。新型コロナウイルス感染禍でオンライン開催があったものの、磯焼けなど海を取り巻く環境の変化に対応を求める場や近況を報告する場として続いてきた。
今回は元日の能登半島地震で被災した輪島市から海女8人が参加し、9月の奥能登豪雨と合わせて被害を報告した。海には泥が堆積(たいせき)し、隆起した漁港や陥没した道路の復旧が遅れていることに「国にもっと早い対応をしてほしい」と涙ながらに訴えた。
海女の報告に先立ち、石川県職員が水産業への影響について発表した。スライドで隆起した漁港や豪雨による土砂など被害状況が映し出されると、参加者は身を乗り出し、スマートフォンで撮影しながら聴き入った。
地震から数カ月後に行った調査では約4メートル隆起し、干上がった海底でサザエやワカメなどの海藻が死滅しているのを確認したという。1割ほど残ったワカメから新芽が出ていたにもかかわらず、豪雨により流出した土砂で埋まってしまった状況などが報告されると、知ることのなかった被害に会場は絶句した。
また、海女によるトークセッションも行われた。被災状況や避難生活を振り返った輪島市の海女たちは言葉を詰まらせながら、土砂が流れ込み漁場に影響を及ぼしている現状に、「海は“窒息”しているのに、(土砂は)人間の力ではどうにもならない」「今も川は濁っている。山を治さないと海は一生元には戻らない」と強調した。
「輪島の海女漁保存振興会」の門木奈津希会長(43)は「心が折れて諦めようと思ったこともあったけど、皆さんの心配や応援の声を聞いて頑張ろうと思った」と感謝を伝えた。今回被災した経験から、参加者には海で働く同じ仲間として「いつ何時に起こるか分からない地震に対して備えをしてほしい」と訴えた。
岩手県野田村の海女、安藤智子さん(35)は東日本大震災を思い出しながら、「海女も漁業者もつながっていて、心が折れそうになっても励ましあって進んでいきたい」とエールを送った。サミットで知り合った仲間と連絡を取り合い、能登に支援物資を送った鳥羽市安楽島町の出間リカさん(60)は「私たちも海がないと(生活が)やっていけない。だからこそ南海トラフに備えたい」と輪島市の海女からの警鐘を受け止め、想定される南海トラフ地震に向け、備えを進める決意を新たにした。
サミットでは海女をとりまく水産資源の減少や高齢化などの問題に加えて石川県の海女を支援するため、「海女同士の交流を深めて情報を交換し、この難局を乗り切るため皆で力を合わせていく」と大会宣言が採択された。【下村恵美】