「経営の神様」がAI(人工知能)で再現される――。パナソニックホールディングス(HD)とPHP研究所は27日、両社を創業した松下幸之助氏(1894~1989年)を再現したAIを開発したと発表した。質問をすると、幸之助氏の著作や発言のデータを基に本人の思考を反映した回答を生成し、本人の話し方を再現した音声で答える。
松下電器産業(現パナソニックHD)を一代で世界的企業に育て上げた幸之助氏は、経営理念や生き方について、さまざまな場で多くの言葉を残した。68年刊行の「道をひらく」など、多くの書籍も出版している。
開発したAIは、パナソニックHDとPHP研究所が保存する文書や音声など約11万点の資料のうち、3400万文字分のテキストデータと48時間分の音声データを基に回答を生成する。
質問を認識してから約10秒で回答できるよう処理を高速化したほか、回答の「幸之助らしさ」を研究者に評価してもらい、精度を高めた。
音声は70歳ごろの声を再現し、語尾が小さくなるなどの話し方の特徴を反映した。創業家関係者からも「似ている」との意見が寄せられたという。
今後も幸之助氏から直接指導を受けた人から意見を聞くなどして改良を続ける。AIは公開せず、経営理念の研究や社内勉強会の企画などに活用する。【妹尾直道】