忍者100人が23日、東京都心の晴れ渡った空の下、築地、銀座から霞が関、永田町、さらには神宮外苑に出没した。忍者装束で都心を巡るイベント「忍者百人衆 江戸で伊賀/甲賀の気配を探れ」の参加者たちだった。すれ違う外国人観光客の写真に納まり、「ニンニン」と声をかけられると、忍者ポーズで応えた。約14キロを歩いて道行く人を驚かせ、インパクトを残した。【大西康裕】
三重県伊賀市と滋賀県甲賀市の観光協会などで構成する「忍びの里伊賀甲賀忍者協議会」が両市と忍者をPRし、忍者ファンに楽しんでもらおうと企画し、百人衆を募集した。宇都宮市から兵庫県、徳島県までの74人が参加し、スタッフを合わせると忍者集団は約100人に膨らんだ。台東区の上野公園に設置したテント内で協議会のレンタル忍者装束か自前の忍者衣装に着替え、「出陣」の合図で午前9時半ごろ、行列となって公園を出た。
コース設定と案内は今回も忍者忍術学研究の第一人者、山田雄司・三重大学教授。約4キロ歩いて千代田区神田駿河台へ。「甲賀坂」という名が残り、「甲賀者」が多く住んだ場所という山田教授の解説を聴いてから地下鉄新御茶ノ水駅へ。同日比谷駅で乗り換え、築地駅で下車した。
地上に出ると、中央区築地の築地本願寺があった。築地場外市場方向に歩き出し、同市場の手前で左折して勝鬨(かちどき)橋へ。橋のたもとで山田教授の解説会が再びあり、古地図に「伊賀者給地」と記載がある伊賀者ゆかりの地と説明があった。ここで昼食休憩となったが、同市場は外国人観光客も多数いて大混雑だった。
昼食を終えると、「歌舞伎座」の前を通り、銀座4丁目交差点へ。さらに繁華街を進み、山手線をくぐり、日比谷公園を回り込み、千代田区霞が関の官庁街を過ぎると永田町。国会議事堂横、首相官邸前、自民党本部前と進んだ。祝日で閑散としていたが、警察官の姿が目立ち、度々呼び止められ主催者がイベントの説明をしていた。坂を下ると、一転して繁華街の赤坂。TBS前で山田教授が三度目の解説会。付近に「一ツ木町飛地伊賀者給地」があった。
赤坂から神宮外苑へ。色づいて大にぎわいの「いちょう並木」の脇を過ぎると、サッカーの天皇杯全日本選手権決勝戦中の国立競技場。大歓声を聞きながら、神宮外苑を抜け、渋谷区千駄ケ谷の鳩森八幡神社に到着。山田教授の最終解説があり、付近は甲賀ゆかりの者の甲賀組の組屋敷があったなどと説明。神社を後にすると、百人衆は千駄ケ谷駅に向かった。築地から歩いた距離は約10キロ。秋葉原駅経由で午後5時ごろ、上野公園に戻った。
イベントは2014年に始まり、参加者は毎回、ほとんど関東在住。新型コロナウイルス感染症の影響で20~22年は中止。18年から4回連続で参加している東京都八王子市の女性(53)は「山田先生の解説があって忍者ゆかりの地を巡るのがいい。それがないと仮装行列になる。今回は赤坂に伊賀者が支配し開拓したゆかりの地があったというのが面白かった」と話した。