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体重乗せると転倒防止ストッパー 学生と企業が障害者向けの椅子開発

毎日新聞 2024年11月28日 9時45分

 障害者や高齢者が望む装具の開発・設計に取り組んでいる九州工業大(北九州市戸畑区)の学生団体「すぐ創る課」が、電気機械器具メーカーのオムロン太陽(別府市)と連携して下肢障害者向けの椅子を開発した。片側の肘掛け部分に体重を乗せるだけでキャスターの動きを止める機能が働く「ストッパー椅子」だ。製品は12月に東京で開催される、障害者の自立支援機器を作る人と使う人が集う「ニーズ・シーズマッチング交流会」に共同出展される。

 九工大は介護ロボットの開発・実証などを目的に、地元の障害者や高齢者、介護従事者などを被験者に研究する拠点「スマートライフケア共創工房」を運営している。2021年、研究に協力してくれた障害者らへの恩返しの思いを込め、学生らが「すぐ創る課」を設立。立体造形が可能な3Dプリンターを駆使し、求められる製品の開発・設計に取り組んできた。

 現在は12人のメンバーが福祉機器などの設計・開発のほか、企業や近隣の北九州市立ひびきの小、他大学と連携するなど幅広い活動を続けている。

 ストッパー椅子の開発のきっかけは2年前、すぐ創る課の学生が障害者雇用に力を入れているオムロン太陽を見学した際、同社が社員の要望を受けて開発していた下肢障害者向けの椅子について相談されたこと。下肢に障害がある従業員のために肘掛け部分などを改造した試作品だったが、重くて扱いが難しいなどの問題があった。

 そこで学生たちは社員の意見を聞きながら、肘掛け部分を3Dプリンターで設計し、プラスチック製にするなど軽量化を図った。また、車椅子などから移る際に左右両方の肘掛け部分に体重を乗せるとストッパーが働くようにした。これにより意図しない椅子の動きがなくなり、転倒を防止できるようにした。

 製品は22年、「ストッパー椅子」の名称で、ニーズ・シーズマッチング交流会に共同出展された。その後も障害者や介護士などの意見や要望を取り入れて改良を重ね、片側の肘掛け部分に体重を乗せるだけでストッパー機能が働くようにした。また、椅子の下部をシンプルにしたほか、設計全体を見直して安定性を高め、立ち上がる際の不安を解消した。

 改良を加えたストッパー椅子は、12月10~12日に東京で開催されるマッチング交流会に出展する他、公益財団法人「テクノエイド協会」のウェブ交流プラットフォーム内で25年1月末まで紹介されている。

 開発の中心を担った大学院生の藤田亘さん(25)は「障害のある方の生活を助け、けがの防止になってほしいという思いを込めて作りました。障害はさまざまです。交流会の意見を聞いて、さらに良いものにしていきたい」。すぐ創る課代表の大学院生、梶原拓己さん(24)は「我々の作ったものを一人でも多くの方に役立ててもらえたらうれしい」と話している。【反田昌平】

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