マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」を読み取るオンラインシステムの導入を医療機関に義務付けた厚生労働省の省令を巡り、医師1415人が義務化に従う必要がないことの確認を求めた訴訟の判決で、東京地裁は28日、医師側の請求を棄却した。岡田幸人裁判長は、義務化を適法だと判断した。
医療機関は従来、健康保険証かマイナ保険証のいずれかで保険資格を確認してきたが、国は「デジタル化でよりよい医療を提供する」として厚生労働省令を改正。2023年4月からマイナ保険証で患者の保険資格を確認できるようにする体制整備を医療機関側に義務付けた。
訴訟では、この改正省令が、保険診療のルールを定めた健康保険法の趣旨を超えた違法なものかが焦点となった。
判決はまず、健康保険法が医療機関の守るべき内容を厚労省令に委ねているとした。
さらに、オンラインシステムの導入で、患者が受け取っている薬の情報を医療機関と共有することができるようになり、より適切な医療の提供が期待できると指摘。一部のシステムで不具合が起きたことは認めつつ、国民の生活の安定と福祉の向上という健康保険法の目的に、システムの義務化が整合しないとは言えないとした。
義務化による体制整備で医療機関に経済的負担が生じるとしても、事業継続が困難になるとは直ちに言えず、改正省令は健康保険法の趣旨を超えていないと判断した。
佐藤一樹・原告団事務局長は判決後の記者会見で「義務化による現場の負担を訴えたが、判決では無視され、残念だ」と話した。医師側は控訴する方針。
政府はマイナ保険証の推進に伴い、12月2日に現行保険証の新規発行を終了する。【菅野蘭】