神戸市立王子動物園(同市灘区)で飼育する6頭のコアラが食べるユーカリを栽培している市公園緑化協会は、食用にならない葉を使ってアロマオイルの製造を始めた。コアラは柔らかい新芽を好むため、出荷できない多くの葉が発生していた。園内のショップなどで、「コアラのユーカリアロマスプレー」(100ミリリットル、1100円)として販売している。
コアラの飼育は1991年に始まり、協会は委託を受けて前年から本来はオーストラリアなどに分布するユーカリ栽培に取り組んだ。同市西区のほ場約9000平方メートルで、10種類約2300本を育てている。コアラは新芽が好物のため、先端に新芽が付いた枝を約1メートルの長さに切って出荷。残った枝は春にまとめて剪定(せんてい)し、処分している。
協会では2024年春から廃棄していたユーカリの有効利用を図り、市民に栽培事業への理解を深めてもらうことを目的とした「ユーカリプロジェクト」を始動。挿し木による観賞用の苗木づくりや木材製品などの活用を検討する中、ユーカリから精製したアロマオイルは商品化されている例があり、実現性が高いと判断。6月に市内でハーブ専門店を経営する会社「リバーワークス」に相談し、アロマに精通したスタッフに、広く親しまれる香りがとれる品種を調べてもらった。
その結果、ビミナリスとカマルドレンシスの2種類が適していると判明。動物園も加わった3者の共同事業として商品開発を進め、10月にアロマスプレーが完成した。ユーカリ本来の虫よけや殺菌効果に加え、レモングラスやミントを混ぜ、爽やかな香りが広がり、リフレッシュ効果も期待できるとしている。
10月下旬から動物園のショップで販売したところ、10日あまりで用意した100本が完売。さらに葉を採取して100本を増産中で、順次販売している。動物園のX(ツイッター)には「素晴らしい取り組みでうれしい」「花粉症対策になりそう」「(コアラの)イラストやパッケージもかわいい」などの反響が寄せられている。
協会の担当者は「ユーカリを有効活用し、コアラファンにも喜ばれるウィンウィンの試みになっている。反響が続けば、定番商品化したい」と喜んでいる。【山本真也】