信号機のない横断歩道に横断待ちの歩行者がいる際、一時停止する車の割合が三重県で大幅に増加している。日本自動車連盟(JAF)三重支部の調査によると、2019年の3・4%は全国の都道府県で最下位(平均17・1%)だったが、今年は過去最高の64・3%を記録、14位にまで躍進した。特別な理由があるのだろうか。
調査は8月7~28日に信号機が設置されていない県内2カ所の横断歩道で実施。JAF職員が歩行者を装い、実際に横断して車が停止する率を調べた。この調査は片側1車線の道路であることや道幅、一定の通行量など条件をそろえて16年から全国で行われ、都道府県別の数字は18年から公表されている。
全国1位は調査開始時からずっと長野で今年は87・0%、2位は石川の80・9%、3位は岐阜の75・2%。一方、最も低かったのは富山の31・6%だった。18年に1・4%(全国44位タイ)だった三重は19年に3・4%で最下位に転落したが、以後は毎年のように2桁の伸びを見せ、今年は前年同期比13・0%増。全国平均53・0%を11・3%上回った。
県警の調査でも一時停止率は近年増加しており、23年は57・9%とJAFと似た数字になっている。
「特別な理由は明確には分からない」
「躍進」の要因について、JAFは「違反に対する認識の高まりで、停止率は全国的に伸びており、特別な理由は明確には分からない。県警と協力して企業や学校で講習など実施している効果ではないか」と説明。県警交通企画課も「地道な啓発活動が功を奏した」とみている。
JAFによると、全国1位の長野では、子どもたちが横断歩道を渡る時に手を挙げ、運転手にアイコンタクトでお辞儀をする習慣が根付いているといい、県民性も大きな要因の一つのようだ。
三重では昨年11月に一見勝之知事を乗せた公用車が歩行者のいる横断歩道で一時停止を怠り、運転手が県警から青切符を交付されていたことが今年5月になって発覚。地元紙で大きく取り上げられ、話題になったことがある。
一方、県警によると、今年10月末までの暫定値で、信号機のない横断歩道における歩行者の人身事故数は28件。昨年1年間の29件を上回る勢いだ。県警交通企画課は「一時停止の改善が事故防止につながっているのか、何ともいえない」と話している。
道路交通法では、横断歩行者妨害の違反行為について違反点2点、普通車は9000円の反則金と定めている。【渋谷雅也】