受動喫煙被害の現状や対策を発表し議論する日本禁煙学会の学術総会が16日、鳥取県米子市の米子コンベンションセンターであり、住宅での受動喫煙問題などについて考えた。総会では、自宅など私的空間での喫煙でも他者に被害を与えないよう、法整備や行政介入を求めていくことなどが宣言された。
総会では、兵庫県内の女性(58)が、分譲マンションで隣室からの受動喫煙被害により引っ越しを余儀なくされたことを訴えた。隣室に喫煙男性の家族が転居してきた直後から、女性宅の窓を全て閉め切っても臭いが入り込むようになった。ベランダで喫煙している男性に直接「臭いが来て困っている」と伝えたが、男性は「配慮して吸っている。プライベート空間での喫煙にとやかく言われる筋合いはない」との言い分で、被害は収まらなかった。
女性は、同様に困っていた別の住民とマンション管理規約細則の改定を住民総会で求め、「近隣に受動喫煙被害を与えること」を禁止する項目を追加してもらった。被害は幾分緩和したが、部屋に入ってくるたばこ臭がなくなることはなく、家族の体調も悪化して転居に追い込まれた。女性は「逃げ場のない自宅で一方的に健康被害を受け続けることは、あまりにもおかしい」と考え、「住宅での受動喫煙被害を考える会・兵庫」を設立し活動を始めた。
改正健康増進法は受動喫煙被害を与えないよう喫煙者に配慮義務を課しているが、「配慮しているから問題ない」と趣旨を曲解して開き直る喫煙者が後を絶たないのが現状だ。
シンポジウムでは、受動喫煙トラブルに詳しい岡本光樹弁護士が法解釈の仕方やこれまでの判例を紹介。マンションの自室やベランダでの喫煙について、名古屋地裁が2012年12月、被害を与えながら防止措置を取らない場合は不法行為にあたるとして損害賠償を命じた判決などを解説した。近年は、近隣に不快感を与えるだけでなく「与える恐れ」のある自室内喫煙を管理規約で全面禁止にしたり、「禁煙マンション」として分譲したりするケースが珍しくなくなっているという。【阿部浩之】