兵庫県知事選で再選した斎藤元彦知事(47)が、選挙運動の対価としてPR会社側に約70万円の報酬を支払ったとして、大学教授らは2日、斎藤氏と会社社長に対する公職選挙法違反容疑での告発状を県警と神戸地検に送付したと明らかにした。教授は「報酬に当たるのは明らかで、買収と被買収が成立する」と主張。捜査当局は受理するか慎重に判断するとみられる。
神戸学院大の上脇博之教授と郷原信郎弁護士が2日、オンラインで記者会見して発表した。斎藤氏は報道陣に「公選法に違反しないと認識している。弁護士に対応をお願いしている」と述べた。
公選法では選挙運動員に金銭や物品などを提供することに加え、運動員がそれらを受け取ることも禁じている。ネット上の選挙運動についても業者が主体的に企画・立案する場合は、報酬の支払いが買収に当たる恐れがあるとされる。
告発状では、社長はネット上の選挙運動を含む広報全般を企画・立案して実行し、斎藤氏への投票を呼びかける「選挙運動者」だったと主張。その報酬として斎藤氏は選挙期間中の11月4日、PR会社に71万5000円を支払ったとされる。社長も受け取った疑いがあるとしている。
社長は投開票後の11月20日付で、ネットの投稿プラットフォーム「note」に投稿。斎藤氏にSNS(ネット交流サービス)の運用方法を提案したとし、「広報全般を任せていただくことになりました」と発信したが、現在は一部が削除されている。
これに対し、斎藤氏の代理人弁護士はこれまでの会見で、支払った金銭は公選法で認められているポスターなどの製作費だったと説明した。社長個人についても斎藤氏の公式応援アカウントの記載事項チェックなどを担ったが、あくまでボランティアの立場だったとし、広報全般を依頼した事実はないと主張していた。
上脇教授は「社長が発信した通り、主体的で戦略的なPR活動を行っていたことは明らかだ。金銭は報酬に当たると考えられ、捜査を尽くしてもらいたい」と強調した。【大野航太郎、山田豊、山田麻未】