大阪府高槻市に建設された新しい関西将棋会館が3日、グランドオープンし、公式戦と女流棋戦の対局が始まった。一方、一般の将棋ファンが訪れる1階の将棋道場とオフィシャルショップでは、同市在住の福崎文吾九段(64)が一日道場席主と店長を務め、待ちかねた多くの将棋ファンを出迎えた。
最上階(5階)の特別対局室では、第83期名人戦順位戦(毎日新聞社、朝日新聞社主催)A級6回戦を戦う豊島将之九段(34)と稲葉陽八段(36)が相対した。
5階の対局室はこの1室だけ。大阪市福島区の旧関西将棋会館の対局室「御上段(おんじょうだん)の間」と同じ18畳の広さで、床の間に掛かる木村義雄十四世名人、大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、谷川浩司十七世名人の掛け軸もそのまま移された。
公式戦のこけら落としに臨むことになった稲葉八段は「新しい会館でA級順位戦という大舞台。しかも子供の頃からたくさん指してきた豊島九段が相手なので頑張りたい」と意欲満々。
豊島九段も11月の「将棋の日」に将棋栄誉賞の表彰を受けた際、「新会館も素晴らしい環境を整えてもらった。ファンの方に喜んでもらえる将棋を一局でも多く指したい」と話していた。
対局は午前10時、定刻通り開始。先手番の稲葉八段はしばし気息を整え、初手で7六歩と角道を開けた。豊島九段はすぐに8四歩と応じ、その後、角交換から稲葉八段が飛車を向かい飛車に振って、居飛車対振り飛車の対抗形の将棋になった。両者ともここまで1勝4敗と苦戦を強いられているが、真新しい会館で心機一転、熱戦が期待される。
4階の対局室では、順位戦C級1組の8局と、藤井奈々女流初段(26)と岩崎夏子女流2級(13)による第7期清麗戦の予選も始まった。
一方、将棋道場には高槻市のマスコットキャラクター「はにたん」が午前11時の営業開始時に訪れ、第1号の会員証を作り、くす玉を割って祝った。
将棋道場は定員120人で、この日は整理券を150枚配った。大阪市西淀川区の学習塾経営、坂内隼人さん(48)、梨恵さん(37)夫妻は1歳の娘と3人で午前8時半から並び、梨恵さんは「大阪市内の旧会館よりは遠くなったけど、イメージと違ってオープンな感じで、来やすそう」と笑顔。アマ1級という隼人さんは「月に2回は来たい」と話し、早速、将棋仲間と対局を楽しんでいた。
将棋道場の入り口に設けたオフィシャルショップでは、棋士の扇子や初心者向けの将棋盤などを販売している。【新土居仁昌】