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加藤登紀子さん、「はだしのゲン」の思い乗せ 平和賞を受け曲披露

毎日新聞 2024年12月3日 14時40分

 歌手の加藤登紀子さん(80)が、20日にさいたま市で開くコンサートのなかで、広島原爆を描いた漫画「はだしのゲン」の作者、故中沢啓治さんの詩をもとにした曲「広島 愛の川」を地元のアマチュア合唱団とともに披露する。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞を受け、「戦後80年を語れる世代として、核廃絶の未来を強く訴え、平和への願いを伝えていかなければ」との思いを託す。【萩原佳孝】

 「広島 愛の川」は2012年に73歳で亡くなった中沢さんが生前残した唯一の詩。毎日新聞の記事で詩を読み、心を動かされた作詞作曲家の山本加津彦さん(45)が中沢さんの妻ミサヨさんと会って作曲を任され、完成させた。加藤さんは2人に依頼されて歌唱を快諾。14年にCDをリリースし、コンサートなどで歌い続けてきた。

 今回披露するのは、原爆開発から投下までの経緯とその惨状、ゲンの平和への思いを「はだしのゲン」から引用し、山本さんの曲に乗せて加藤さんが朗読する「語りバージョン」で、バックコーラスを合唱団が担う。

 11月末、さいたま市中央区であった合唱団のリハーサルに加藤さんと山本さんがそろって参加した。合唱団のメンバーは、同区で子どもらの居場所作りに取り組む「みな風地域食堂」のボランティアら約50人。加藤さんとの「共演」は昨年12月に続き2度目だ。山本さんが伴奏し、加藤さんが声を合わせながら1時間近く練習が続いた。「胸を大きく膨らませて」とユーモアを交えて加藤さんが指示すると、コーラスの響きが変わり、メンバーも笑顔を見せた。

 1943年に旧満州(現中国東北部)ハルビンで生まれた加藤さんにも、被団協のノーベル賞は大きなニュースだった。「心から敬意を表したい。ウクライナの現状もあり核への危機感は募るばかり。被団協の人たちが訴えて続けてきた核の恐ろしさを世界はもっと知らなければ」

 コンサートには、18歳以下の子ども400人を無料招待する。「私に戦争の記憶はないけれど、荒波を奇跡のように生き延びたと母が語ってくれた。戦争を直接知る人はどんどんいなくなる。彼らと次の世代をつなぐ『蝶番(ちょうつがい)』のような世代の一人として、絶望の中にも希望は生まれると伝えていきたい」と話す。

 「広島 愛の川」については「歌手として本当に多くの人に出会い、見送ってきた。その人が立ち去ってもなお存在感は残る。中沢さんと生前お会いしたことはなかったけれど、歌を通してその人を思い、何かを伝えることができる」と語った。加藤さんの事務所によると、コンサートには中沢ミサヨさんも招待しているという。

 作曲した山本さんは「被爆から80年を前に、多くの人が同じ方向を向いて、『2度と原爆を許してはならない』という被爆者の強い思いをメッセージとして発信しようとしていることに、大きな意味があると感じている」と話した。

さいたまで20日、コンサート

 コンサートでは昨年に続き、児童養護施設出身の若者を取り上げたドキュメンタリー映画「REAL VOICE」のために加藤さんが作った「この手に抱きしめたい」も、山本昌子監督や映画に出演した若者たち、支援してきた同合唱団とともに歌う。合唱団代表で食堂を運営する山田ちづ子さんは「今年もまた、加藤さんと歌えるのをとても楽しみにしています」。

 「加藤登紀子ほろよいコンサート2024」は、さいたま市の大宮ソニックシティで20日午後3時半開演。デビュー60周年の思いを込めて「知床旅情」「百万本のバラ」「この空を飛べたら」「難破船」などのヒット曲を歌う。問い合わせ・申し込みはトキコ・プランニング(03・3352・3875)。

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