福岡市近郊で2022年に見つかった特定外来生物のツマアカスズメバチについて駆除や調査を進めてきた環境省九州地方環境事務所は2日、2年間の調査で新たな個体は確認されず、定着を阻止できたと発表した。専門家は「手遅れになる前に阻止できてよかった」としている。
ツマアカスズメバチは国内では長崎県・対馬だけに定着しているが、22年に福岡市東区や福岡県久山町、篠栗町で確認され、定着が懸念されていた。環境事務所が専門家と駆除や調査を進め、23、24年春と秋の4回にわたり営巣の可能性がある地域にトラップ計2800個を設置したところ、新たな個体は確認できなかったという。
環境事務所は集中的な調査を一旦終えるが、既にツマアカスズメバチが定着している韓国や対馬から船舶などによって侵入する恐れがあるといい、今後も自治体と協力して港湾周辺の監視を続ける。
環境事務所とともに対策に当たった九州大大学院の上野高敏准教授(応用昆虫学)は「九州で増えれば本州にも拡散してどうしようもなくなる。重要な侵入起点をつぶすことができた意義は大きい」と強調し、「一度定着すれば駆除に必要な労力や費用も膨大になる。早期発見と早期根絶ができた今回の成果は今後の外来種対策に生かせる」と話す。
ツマアカスズメバチは中国や東南アジアなどに広く分布。体長は女王バチ3センチ前後、働きバチ2センチ前後。国内では12年に対馬で初確認され定着した。繁殖力や分布拡大能力が強く、生態系や養蜂業への悪影響が懸念されている。在来のオオスズメバチなどと比べて人体被害が特に大きいわけではないが、注意が必要とされる。【平川昌範】