「まちの本屋」の苦境が伝えられる。県内46店の書店が加盟する「熊本県書店商業組合」はこの秋、プレミアム付き図書券を販売した。1000円で1300円分の本が買えるという図書券で、利用できる店舗が一部にとどまったものの、数日で用意した6600枚のほとんどが売り切れた。組合の長﨑健一副理事長(45)に狙いや手応えを聞いた。
――プレミアム図書券を導入した経緯は。
◆地元商店街でプレミアム商品券を販売しているが、いつも行列ができている。同様の事業で地域の書店を活性化させようと企画した。
――プレミア率30%とは思い切った数字。
◆初回ということもあり、強く訴求しようと決めた。事業費は270万円を見込み、県補助200万円を1枚300円分のプレミアに、残る70万円を組合負担でチラシの作成などに充てた。
――かなりの好評を得たようだ。
◆書店や紙の出版物の減少が続いている中、今日の事業は手探りだったが予想をはるかに超える反響があった。利用できる店が限定されているにも関わらず、地域の書店に対する潜在的なニーズを実感させてくれた。
――どんな人が買ったのか。
◆書籍が好きな方はもちろんだが、子育て世代も目立った。小学生の子どもに学習漫画シリーズを買ってあげたいとなると、1万円以上する。次の世代に本に親しんでもらうきっかけにもなったと思う。
――課題は。
◆お客さんに買っていただこうとしても売り切れというケースがあり、残念な思いをさせてしまった。また準備期間が短かったこともあり、参加店が17店舗にとどまったことも課題だ。プレミア率を調整して図書券の発行枚数を増やすことで、多くの店に図書券を置き、お客様に届きやすくすることも今後は考えたい。
――国も「まちの本屋」を支援する姿勢を示している。
◆書店を巡る環境が厳しい中で、国の具体案を待って動き出してからでは遅い。今回の事業で大きな手応えを得た。書店側の活性化策を政府に示すことで、業界全体の取り組みが加速するのではないか。【聞き手・中里顕】
自治体の27.9%が「書店ゼロ」
「まちの本屋」は全国で苦境が続く。書店や出版社でつくる一般社団法人「日本出版インフラセンター」によると、3月末時点の書店数は1万918店で、10年前に比べ約4700店減少している。
また出版文化産業振興財団の調べでは、書店ゼロの自治体は8月時点で487市町村に上り、全体の27・9%に達した。無書店の自治体の割合は熊本46・7%▽宮崎38・5%▽鹿児島39・5%――だった。市としては、熊本県合志、宮崎県串間、鹿児島県垂水、伊佐の各市が無書店だった。
危機感を抱いた経済産業省は3月、街の書店振興に向けたプロジェクトチーム(PT)を設置。書店を「創造性が育まれる文化創造基盤」として書店経営者らと意見交換して経営環境の課題を探った。
PTは10月、「読書離れ」による来店客の減少など支援策を検討する上での課題をとりまとめた。関係省庁の連絡会議を通し、具体的な書店支援の取り組みが検討される見通しだ。