肉のトレー売りを一部やめるのはYES? NO? 買い物カゴの返却時に環境問題について消費者に意見を示してもらう「買い物カゴ投票」を滋賀県立大人間文化学部の山田歩准教授(48)らが考案した。国連の掲げるSDGs(持続可能な開発目標)を推進するのが狙い。山田准教授は「消費者意識を反映して売り場を改善できる。各地で導入を呼びかけていきたい」と話す。
スーパーで実証実験
「投票」の大まかな手順はこうだ。スーパーなどで、「どっちがいい?」「返却ついでに、未来に一票」「買い物カゴ投票」と書いた看板で客に周知する。意見が分かれそうな環境重視のテーマについて、カゴの返却場所で質問を表示。青(YES)か赤(NO)、どちらかの場所にカゴを重ねてもらうという。
山田准教授らは、世界自然保護基金(WWF)ジャパンと連携し、10月に東京都葛飾区のスーパーで実証実験をした。「一部のお肉を『トレー』から『ノントレー包装』に変更してもいいですか?」と尋ねたところ、806票中YESが583票(72・3%)を占めた。また「特定の時間帯に一部商品棚を消灯」「環境配慮商品などのコーナー設置」についてはそれぞれ73・4%、69・4%が賛成だった。早速、鶏肉の一部をノントレーにしたり、昼間に飲料コーナーを消灯したりと取り組みを進めているという。
行動経済学を参考に
カゴ返却を投票行動に変えるという手法は、2017年にノーベル賞も受けた行動経済学「ナッジ理論」を参考にしている。ナッジとは英語で「そっと後押しする」といった意味で、この理論は強制するのではなく、よりよい選択をするように導く手法として知られる。
山田准教授は三菱電機と協働し滋賀県立大学内通路のディスプレーを活用。学生の「歩きスマホ」を自発的に減らすなど、同理論の研究で知られる。
実施マニュアルなどは、「買い物カゴ投票」で検索すれば入手できる。【伊藤信司】