馬車に揺られながら、足湯でほんのりと温まろう――北海道帯広市の夜の繁華街を巡る「馬車BAR」を運営する十勝シティデザイン(帯広)が1日、1往復限定で「足湯馬車」を試験的に運行した。馬とモール温泉を掛け合わせた十勝らしい試みだ。関係者は「街が楽しくなれば」と今後の展開にも前向きな姿勢を示している。【鈴木斉】
足湯馬車は、十勝シティデザインとJR帯広駅前にモール温泉の自家源泉を持つ「ふく井ホテル」などが企画。この日は、帯広駅前―帯広競馬場間で運行した。
馬車にモール温泉の源泉を注いだ木製のおけを積み込み、乗客はおけに足を浸しながら、窓越しに街並みをゆっくりと眺める。片道約2・5キロを約50分かけて移動する「スローな旅」を楽しむことができる。
娘2人と乗車した市内の主婦(45)は「馬車BARは夜の運行なので、昼間の馬車がとても新鮮に感じられた。足湯も気持ちよかった」と満足げな様子だった。
足湯馬車を引いたのは馬車BARの専属馬で、ばんえい競馬の元競走馬(ばん馬)のムサシコマ(雄12歳)。「コマちゃん」の愛称で親しまれている体重約1トンの重種馬で、沿道の市民らが笑顔で手を振った。
モール温泉は、植物が長い時間をかけて堆積(たいせき)し、できあがった層を通って湧き出る温泉のこと。十勝川温泉(音更町)をはじめとする十勝地域が代表的な湧出(ゆうしゅつ)地となっている。植物性温泉は、一般的な鉱物性温泉に比べて希少な泉質で、北海道遺産に選ばれた。帯広駅前で自家源泉を浴場に使っているのは、ふく井ホテルだけだという。
一方、ばん馬が引く馬車は、ばんえい競馬の開催地ならではの事業として観光客らに人気だ。今回の足湯馬車は、十勝らしさを掛け合わせた試験運行となった。
足湯馬車は昨年11月にも市中心部の約1キロの巡回コースで行われた。今回は帯広競馬場敷地内で観光交流事業を展開する「とかちむら」が運営に加わったことなどから、コースを競馬場まで伸ばして実施した。
足湯馬車の今後は未定だ。ただし、十勝シティデザイン馬文化事業部マネジャーの永田剛さん(65)は「『馬がいる街』『温泉がある街』をPRできればと企画した特別運行で、将来に向けた実証実験のようなもの。実績を重ねることで、夢が膨らむ気がします」と話した。