国際教育到達度評価学会(IEA、本部・オランダ)は4日、小学4年と中学2年を対象に2023年3月に実施した「国際数学・理科教育動向調査」(TIMSS)の結果を公表した。日本は理科の平均得点が前回より下がったものの算数・数学は前回並みで、いずれの教科も最上位グループに入った。一方、平均得点の男女差が開きつつあり、文部科学省は要因分析を進める。
TIMSSは4年ごとに実施され、今回は小4が58カ国・地域、中2が44カ国・地域から計約66万人が参加した。国内では小4が141校の3875人、中2が133校の3905人、それぞれ無作為に選ばれた。
日本の平均得点は、小4算数が591点(前回593点)で5位、中2数学が595点(同594点)で4位だった。いずれも順位は前回と同じだった。
理科は、小4が555点(同562点)の6位で、前回から二つ下がった。中2は557点(同570点)で前回と同じ3位だった。
小4理科は過去6回の調査で2~4位で推移し、初めて5位以下になった。ただ、5位のイングランドとは1点差で、IEAは日本を「最上位グループ」に位置づけている。
理科では小中とも得点低下が目立ったが、文科省は「新たに参加した中東・アフリカの生態など、日本の児童生徒にはなじみのない分野の出題があったため」としている。身近な素材を重視する学習指導要領の範囲外からの出題だったため、学力が低下したとはみていない。
平均得点を男女別に分析すると、4教科いずれも男子が女子より高かった。小4理科は前回、女子の平均得点が男子を6点上回っていたが、今回は男子が6点高かった。小4算数も前回は女子の平均得点が1点高かったが、男子が逆転し、差は10点に広がった。他の2教科はいずれも前回から男子の平均得点が高かったが、差が拡大した。
男女差は興味・関心などを尋ねる調査でも浮き彫りとなった。理科や算数・数学が「楽しい」「得意」と感じる割合は4教科いずれも男子が女子より高かった。中2のみが対象の設問で「教科が日常生活に役立つ」「教科が含まれる職業につきたい」と考える生徒の割合も同様だった。
文科省は「今回の調査には男女差の要因を分析する手がかりはない」とした上で、「一般論として、社会や保護者、教育者の中にアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)がある。『女の子なのに算数ができてすごいね』と言ったり、女性の研究者の少なさが指導や教育に影響したりすることがあり得る。それを意識的に取り払う努力をすべきだ」と指摘した。
中2の2教科について、日本は「日常生活に役立つ」と考える生徒の割合の低さが課題だったが、03年調査と比較して数学は11ポイント、理科は19ポイント増えた。一方、教科を「得意」と考える生徒の割合はほぼ横ばいで、数学・理科とも国際平均を下回った。「役立つ」という感覚が苦手意識の克服に結びついておらず、文科省は「苦手意識は職業選択にも影響する。女性の理数系人材を育成するためにも、早い段階から意識を変える必要がある」としている。【斎藤文太郎】