子育てと家族の介護を同時に担うダブルケアの負担軽減策として、国が市町村に推奨する「ワンストップ型支援」について、参加する自治体が2割にとどまっていることが厚生労働省への取材で明らかになった。部署の垣根を越えて異なる分野の課題に対応する自治体に交付金を出す取り組みにもかかわらず、支援が広がっていない。
厚労省の有識者会議は来年夏にも、現状や課題を分析する報告書を公表する方針だ。
ダブルケアラーの課題はさまざまな分野にまたがり、複雑化している。自治体の窓口は分野ごとに担当部署が分かれているため、重い負担に悩む人たちが相談してもたらい回しにされるケースも少なくない。
こうした問題を解消しようと、厚労省が2021年4月に始めたのが「重層的支援体制整備事業」だ。
「行政の縦割り」を見直し、さまざまな担当部署が横断的にダブルケアラーらの支援を進める自治体に取り組み内容や人口規模に応じて交付金を出す。相談をまとめて受け付ける窓口の開設に乗り出す自治体もある。
スタートから間もなく4年を迎え、厚労省によると、同省はダブルケア支援の中核と位置付けるが、24年度時点で参加するのは全国1741の自治体のうち346市区町村で20%。来年度には473にまで増える見通しだが、それでも全体の3割にも満たない。
厚労省の有識者会議「地域共生社会の在り方検討会議」は重層的支援の課題について議論しており、来年の夏にも効果の検証や今後の方向性を報告書にまとめる方針だ。【郡悠介、井手千夏】
重層的支援体制整備事業
地域住民が抱える多様な悩みに対し、関係機関とともに包括的な支援が可能な仕組みを設けた市町村に交付金を出す。少子高齢化や人口減少を背景に多分野にまたがる生活課題が増える中、ダブルケアや高齢の親が引きこもる中高年の子を養う「8050問題」などを想定し、安倍政権が社会福祉法の改正に伴って創設した。