福井市で38年前、中学3年の女子生徒(当時15歳)が殺害された事件を巡り、有罪が確定して服役した前川彰司さん(59)の再審公判に向けた協議が11日開かれ、検察側は新たな証拠を請求しない方針を示した。弁護団が協議後に明らかにした。再審公判は2025年3月にあり、即日結審する見通しという。前川さんが再審無罪となる公算がさらに大きくなった。
3月公判、即日結審見通し
前川さんは1審・福井地裁(1990年)で無罪となったが、2審・名古屋高裁金沢支部(95年)で懲役7年の逆転有罪となり、最高裁で確定。この高裁支部での裁判がやり直される。10月に再審開始決定を出した山田耕司裁判長が再び審理を担当する。
弁護側によると、この日は裁判官や弁護人、検察官による3者協議が高裁支部であった。その場で検察側は再審公判での主張を明確に示さなかったが、新たな証拠を提出しないと明らかにした。
一方、弁護側は開始決定で新証拠と認められたものを改めて請求すると表明。これらの証拠について、検察側は採用して調べることに同意すると回答したという。
今後のスケジュールについては、25年1、2月にも協議を続行。再審公判は3月に初公判を開き、即日結審する方向でまとまったという。判決は年度をまたぐ可能性がある。
前川さんの再審請求は2度目。今回の開始決定は、前川さんを有罪とする根拠となった関係者証言の信用性を否定した。当時の警察官らの筋立てに沿って証言を誘導した疑いがあるとし、「(前川さんは)犯人であると認められない」と判断。検察側がこの決定に異議を申し立てず、再審開始が確定していた。
この事件は86年3月19日、福井市の市営住宅で女子生徒が刃物で刺されるなどして殺害された。前川さんは約1年後に殺人容疑で逮捕されたが、一貫して無実を主張してきた。
協議後、前川さんは「検察には有罪を立証しないとはっきりと言ってほしかった」とコメント。名古屋高検の石島正貴刑事部長は報道各社の取材に「非公開の手続きなので詳細は答えられない。主張は再審公判で明らかにする」と述べるにとどまった。【木島諒子、萱原健一、道下寛子】