大阪を拠点に華やかな歌と踊りで多くの客を魅了しているレビュー劇団「OSK日本歌劇団」の新トップスターに就任した翼和希さん。昨年のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」では、劇団に在籍していた笠置シヅ子(1914~85年)をモデルにしたヒロインの先輩役で注目を集め、劇団の全国的な知名度アップに大きく貢献した。
OSKは大阪松竹座の開場に合わせ、1922年に専属の「松竹楽劇部」として創設。大正から昭和にかけての黄金期には迫力あるラインダンスや群舞が注目され、宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)と並び「歌の宝塚、踊りのOSK」と称された。しかし、これまで劇団の道のりは順風だったわけではない。2003年には当時、親会社だった近鉄に支援を打ち切られ、一時解散。劇団員有志による「存続の会」が歴史をつないだ。現在は大阪市のIT企業の子会社となっていて、今年創立102年を迎えた。
翼さんは入団12年目でトップに就任した。11月にはトップスター就任後初の大阪公演「レビューRoad to 2025‼」が上演され、日舞と洋舞の2本立てで「踊りのOSK」をより感じる公演となった。初日から「満員御礼」が出た公演冒頭では口上を述べ、公演後に「(口上は)緊張で目玉が飛び出しそうだった」と振り返った。「地元・大阪での公演は特別な思いがある。全員で無事に初日を迎えられてほっとしています」表情を緩めた。
劇団の稽古(けいこ)場では上級生、下級生といった年次に関係なく、技術を認め合う環境を大切にしているという。また、翼さんは前トップスターの楊琳(やんりん)さんの言葉「舞台上に立った時はみな同じラインに立っている。個々がやるべき役割が違うだけ。個性や自身の表現力を大切に」を胸に、誇りと責任を持った舞台をやり続けていくと力を込める。
紆余(うよ)曲折を経て生き抜いて来たOSKだからこそ、「歌劇」というものをまだ知らない人たちに知ってもらい、生の舞台の良さを感じてもらいたいという劇団員たちの思いは強い。劇団広報の斎藤架奈枝さんは「舞台の中央でも端でも最後列でも、全員が全力投球なのがOSK。その総力の新トップとなった翼和希も団員と共に次なる100年への礎を築いていってくれると思います」と話す。
来年1月にはシンガポール特別公演も控える。日本国内だけではなく、世界中に長い歴史のある日本の文化を広めていくため、OSKの進化は続く。【梅田麻衣子】