公正取引委員会は12日、運送事業者に対する残業代の不払いなど、独占禁止法の「物流特殊指定」に違反した疑いで調査していた管工機材・住宅設備機器販売会社「橋本総業」(東京都中央区)について、同社から提出された改善計画を認定した。行政処分の確約手続きを適用し、排除措置命令や課徴金納付命令は免除する。同社は今後、運送事業者に計約3800万円を支払う方針。
物流特殊指定は、荷主の運送業者に対する優越的地位の乱用を規制するため、下請け保護に準じる規定として2004年に設けられた。これに基づく行政処分は今回が初となる。
公取委によると、橋本総業は遅くとも17年7月以降、商品の配送を委託する運送事業者約25社に対し、積み下ろしや返品回収といった契約外の業務を無償でさせたほか、残業代の不払い、「割戻金」名目での一方的な代金減額などをした。
公取委はこうした行為が、「不当な経済上の利益の提供要請」や「代金の減額」といった物流特殊指定の禁止行為に当たる可能性が高いとみて調査。橋本総業から改善計画の提出を受け、内容に再発防止の実効性が伴うと判断した。
残業規制で物流の人手不足が深刻化する「2024年問題」を踏まえ、公取委は物流特殊指定に関する監視を強化している。11月にはオフィス家具大手「イトーキ」に文書で警告。より迅速に取り締まるための下請け法改正も検討している。【渡辺暢】