認知症の人が行方不明になる事案が増えている問題を踏まえ、公益社団法人「認知症の人と家族の会」は12日、認知症の人が自由に安心して外出できる取り組みや対策の充実を求める緊急要望書を厚生労働相と警察庁長官あてに提出した。各地の警察による捜索時の対応を統一して強化し、一部で形骸化も指摘されている地域の捜索ネットワークの見直しを図ることなどを求めている。
この日、厚労省で開かれた記者会見には、妻の泰子さん(60)が2023年8月から行方不明になっている鳥取県米子市の荒川勉さん(65)も出席。これまでの捜索活動を振り返りながら「個人にできることは限られている。国には真剣に取り組んでもらいたい」と訴えた。各地の当事者家族や団体などと情報を共有する連絡会の設立に向けて動いていることも明らかにした。
家族の会の緊急要望書には、所在地が分かる全地球測位システム(GPS)の利用について、機器を身に付ける本人の意思を尊重するための対応指針を整備するように求める項目も盛り込まれた。家族の会代表理事の鎌田松代さんは会見で「命を守る安全と本人の人権のところで家族も悩んでいる」と説明した。
緊急要望書では認知症の人に優しい地域づくりを進めることも求めており、鎌田さんは「大切な命を守り、つらい思いをする人がいなくなるように自由に安心して暮らせる地域をつくってもらいたい」と強調した。
認知症が原因で行方不明になったとして23年に警察に届け出があったのは1万9039人。統計を取り始めた12年(9607人)以降、11年連続で増えてほぼ倍になっている。多くは無事に見つかるものの、亡くなって見つかる人や行方が分からないままの人もいる。【銭場裕司】