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「使えない」で休眠8年 大阪の市長選で復活の電子投票、雪辱期す

毎日新聞 2024年12月15日 5時0分

 画面に映し出された候補者名をタッチするだけで投票完了――。任期満了に伴う大阪府四條畷(しじょうなわて)市長選(15日告示、22日投開票)で、全国で約8年ぶりとなる電子投票が導入される。デジタル化の先陣を切って22年前に登場したが、相次ぐ機器トラブルや事業者の撤退などで「休眠状態」に。今度こそ汚名返上なるか。5万都市の首長選に全国の自治体が注目している。

 新人2人が立候補を表明しており、選挙戦となる見通し。同日実施の市議補選(改選数1)と併せ、16日から始まる期日前投票も電子投票となる。

 電子投票は2002年2月施行の電子投票法で、地方選挙を対象に認められた。紙の投票に比べて無効票や疑問票の解消、開票時間の短縮が期待できる。ただ、自宅などから投票ができる「インターネット投票」とは異なり、有権者は立会人がいる投票所に出向く必要がある。

トラブル続きで敬遠

 総務省によると、02年の岡山県新見市長・市議選で初めて実施された。当時、開票開始からわずか25分で集計が終わるなどデジタル化の大きな一歩だと注目を集めた。だが、03年の岐阜県可児市議選は、機器の停止で一時投票できなくなるなど大混乱となった。最高裁で選挙の無効が確定し、記述式での再選挙が実施される事態となった。

 03年の衆院選と同日実施だった神奈川県海老名市長・市議選は、データ通信時のトラブルで開票作業終了が予定より4時間も遅れた。いずれも機器の過熱や接触不良が原因だった。「トラブル続き」とのイメージが付いた電子投票の信頼性は大きく揺らいだ。

 国はトラブル防止のため、機器の安全性などを審査するといった対策を講じたが、高額なレンタル料なども足かせとなり、16年の青森県六戸町議補選以降は休眠状態となった。これまで10自治体の25選挙で実施されたにとどまっている。近年は機器を貸し出す事業者が撤退するなど、電子投票そのものが事実上不可能となっていた。

コストや時短効果は?

 今回、四條畷市が導入する背景には、国の運用指針の変更がある。従来、電子投票専用の機器の使用を前提としていたが、総務省は20年に一般的なタブレット型端末の使用も認めることにした。

 今年10月には、京セラが、電子投票を想定したタブレットを開発。この機器を採用することで市長選に間に合った。市選挙管理委員会の担当者は「無効票の解消が長年の課題で何か良い方法はないかと考えており、電子投票の新たな機器が開発されるタイミングと偶然重なった」と説明する。

 投票はタブレットに表示された候補者名をタッチするだけで完了する。投票データはタブレットごとにUSBメモリーとSDカードの2種類の記憶媒体で記録し、投票終了後に市職員が開票所へ運んで集計する。過去の電子投票でサーバートラブルが起きたことから、ネットワークを経由しないシステムを採用した。

 開票所のパソコンに入った専用のアプリで集計することで、前回1時間40分だった開票時間は1時間程度になると見込んでいる。従来90人規模だった開票作業者は、30人弱に削減できる見通しだ。投票データを記録した記憶媒体はそのまま保管される。

 タブレットはレンタルで、市長選と市議補選で別々の端末を使うため、計204台を用意。市はレンタル料やトラブル対応の人件費などを含めて約4450万円を補正予算に計上した。前回選は約1660万円だったため、費用面では割高となりそうだ。

「操作簡単」選管アピール

 全国の自治体から問い合わせが相次いでいるといい、上嶋卓視・市選管事務局長(50)は「電子投票の導入で、正確な意思を投票に反映することができる。操作自体も難しくなく、気兼ねなく投票所に来てほしい」と呼び掛ける。【芝村侑美】

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