認知症のある人とその家族らが気軽に集える場を提供しようと、秋田県大館市の県立大館桂桜高生活科学科は今年度から、学校に当事者らを招いて交流する「認知症カフェ」を定期的に運営し、生徒らが心を和ませている。クリスマスイブを前にした12日には、クリスマスリース作りやハンドベル演奏を楽しむなど、ふれ合いの輪が広がった。
大館市長寿課の地域包括ケア推進担当職員らと連携して企画した。2023年12月と今年6月に大館市であった認知症サポーター養成講座を生活科学科3年生の30人あまりが受講、さらに生活科学科福祉コースの3年生が市主催の認知症カフェ「つながる」にボランティアとして参加したのがきっかけだ。
学校でカフェが初めて開催されたのは今年9月。カフェを訪れる当事者や家族が抱える孤独感や不安を解消するとともに、生徒が地域の中で支える大切さを学び、専門職への橋渡しの役目を果たすことを目的とする。日本の認知症普及啓発のシンボルカラーにちなんで「桂桜カフェオレンジ」と名付けた。
9、10月に続いて今年度3回目の開催となった12日は介護職員初任者研修を11月に修了した福祉コースの3年生7人らが、校内に設けた会場にテーブルなどを用意するなど役割を分担。午前10時半に開店した。
参加費は200円。高齢者を含む男女9人が訪れ、三つのテーブルに分かれて座った。認知症地域支援推進員の保健師や看護師らがサポートする中、生徒らは手際よくコーヒーや紅茶をいれ、食物部の生徒たちが作った菓子とともに提供。利用者との会話を楽しみ、一緒にクリスマスリース作りにも挑戦した。
授業の一環として、生徒らがハンドベルで「星に願いを」を演奏すると、満面の笑みを浮かべて聴き入る利用者の姿も。「楽しかった。また来たい」と、生徒との再会を約束する光景もみられた。
カフェの店長役を務めたのは来春、仙台市内の専門学校に進学し、作業療法士の資格取得を目指すという3年生の木村颯さん。「盛り上がって楽しんでもらえた。1、2回目に続いて参加した人もおり、うれしかった」と笑顔だった。
大館市長寿課地域包括ケア推進担当の保健師、田中早霧さんは「利用者も生徒に温かく接しているのが印象的だった。さらに交流が深まっていくのではないか」と期待する。
桂桜カフェオレンジは来年2月、福祉コース2、3年生合同による4回目の開催が予定され、25年度の継続も決まっている。大館桂桜高の福祉コース担当教員、渡部洋子さんは「認知症カフェで得られる貴重な多くの経験をそれぞれの進路にも生かしてほしい。地域福祉を支える人材になってもらえれば」と話した。【田村彦志】