埼玉県ふじみ野市議会に公民館廃止条例案が提出された2月、存続を求める請願を提出していた市民団体が議会傍聴を呼びかけるため作成したチラシを館内に置くよう公民館に依頼したところ、拒否される事案があり、反発が広がっている。市は「市議会に提案しているものに反対の立場を記載しており、公共性に鑑み不適切」と理由を説明。一部市議からは「(傍聴呼びかけは)正当な内容ではないか」と、対応を疑問視する声が上がっている。
チラシを作成したのは太田政男・大東文化大名誉教授(社会教育学)を代表とする「ふじみ野市の公民館を考えよう会」。今年の3月定例市議会に市執行部が、文化施設の整備に伴う公民館条例を廃止する条例を提案したことを受け、条例案の撤回と、市内に唯一残る上福岡西公民館の存続を求める請願を市議会に提出した。
同会はチラシで、公民館は地域住民の学習権を保障する社会教育施設だとしてなくさないよう訴え、議会での請願審議日程や経緯を記し、傍聴を呼びかけた。2月24日に太田代表がチラシを同公民館に持参し、館内に置くよう依頼。しかし、館長に「チラシの内容の趣旨に公民館が賛同できない」という理由で断られたという。
問題は市議会でも取り上げられた。市は公民館内のポスター、チラシ類の掲示、配架について「館長の裁量による付加的サービス」と説明した上で、「議案に対して反対の立場、撤回を求める請願、そういうものが記載されていた。公共性に鑑み不適切と判断した」と答弁した。議員からは「請願は市の施策に必ずしも合致するものとは限らない。議会で議論し、まだ決定されていないことについて反対と言ったからいけない、というのでは、教育委員会の中立性は損なわれないか」などの指摘が出た。
同条例案は、3月議会で賛成多数で可決。上福岡西公民館は来年度から約2年かけて大規模改修し、文化施設に生まれ変わり、施設の所管は教育委員会から市文化・スポーツ振興課に変更となる。
考える会は、22日にふじみ野市サービスセンターで、今回の問題について考える学習会を開き、元日本社会教育学会長の佐藤一子・東大名誉教授が「9条俳句訴訟判決と学習・表現の自由」と題して講演する。今回の学習会のチラシは上福岡西公民館にも置かれた。市教委は毎日新聞の取材に対し「議案についての賛成、反対が記載されたチラシではないため」と理由を説明した。【鷲頭彰子】