宇宙ベンチャー「スペースワン」(東京都港区)は18日午前11時、本州最南端の町、和歌山県串本町のロケット発射場から、小型ロケット「カイロス」2号機を打ち上げた。しかし、打ち上げ後に飛行中断措置を行い、搭載した五つの人工衛星を宇宙空間に運ぶミッションは失敗に終わった。
民間単独では日本初となる宇宙輸送を目指すスペースワンとは、どんな会社なのだろうか。【阿部周一】
Q 「民間単独で日本初を目指す」というのはどういうこと? これまでもロケットを打ち上げた日本の会社はあったよね。
A 日本の大型主力ロケット「H2A」は、2007年から三菱重工が鹿児島県の種子島宇宙センターで打ち上げ業務を担ってきました。しかし、元は宇宙航空研究開発機構(JAXA)が主導して共同開発したものです。カイロスはスペースワンが単独で開発し、発射場の「スペースポート紀伊」も同社が自前で建設しました。
Q 日本の民間ロケットといえば「ホリエモンロケット」の名前も浮かぶよ。
A ホリエモンこと、実業家の堀江貴文氏が創業した「インターステラテクノロジズ」(北海道大樹町)は19年5月に小型ロケットを高度100キロ以上の宇宙空間に到達させました。ただし、人工衛星は搭載していませんでした。カイロス2号機が人工衛星の打ち上げに成功していれば、民間単独では初めての宇宙輸送となるはずでした。
Q スペースワンってどんな会社なの?
A 18年7月にキヤノン電子とIHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行という四つの会社が共同出資して作った、いわば大企業の連合チームです。和歌山県の銀行やスーパーなども出資しています。
お金や人を出すだけではありません。例えば、キヤノン電子はロケットの部品を提供しました。IHIエアロスペースはJAXAの固体燃料ロケット「イプシロン」などの開発に携わった実績があり、スペースワンに多くの技術者を出向させて、同じ固体燃料ロケットであるカイロスの開発を支えました。
Q 国は支援していないの?
A 発射直後に爆発した24年3月の初号機では、内閣官房から小型衛星の打ち上げを受注しました。また同月に、防衛省から上段エンジンを増強させるための約85億円の研究プロジェクトを受託するなど、政府のバックアップも手厚いと言えます。
Q スペースワンの今後の目標は?
A 通信や観測などに利用できる小型衛星は世界的に需要が高まっています。まずは次号機を無事に打ち上げることが大前提ですが、そのうえで、20年代に年20回、30年代に年30回というハイペースでロケットを打ち上げることを目標にしています。