宇宙ベンチャーのスペースワン(東京都)は18日午前11時、和歌山県串本町の民間ロケット発射場「スペースポート紀伊」から人工衛星を搭載した小型ロケット「カイロス」2号機を打ち上げたが、予定していた飛行経路から外れたため、約3分後にロケットが自ら爆破する飛行中断措置を取り、衛星の地球周回軌道への投入に失敗した。3月の初号機は発射の約5秒後に爆発しており、2回連続の失敗となった。
スペースワンによると、2号機は発射から80秒過ぎ、第1段エンジンのノズル(噴射口)の傾きに異常が発生して姿勢が崩れた。第1段エンジンは燃焼を終えて切り離され、衛星を保護するフェアリングも開いたが、進路が西に大きくずれたため、第2段エンジン燃焼中の発射3分7秒後に自律破壊した。最高到達高度は宇宙空間となる110・7キロだった。
2号機は今月14、15日に上空の強風の影響で2日連続して発射を直前で中止しているが、同社は上空の風の影響は無かったとみている。
記者会見したスペースワンの豊田正和社長は「衛星を託してくれたお客様におわびする。期待に応えられず大変残念に思う」と陳謝。原因究明のため、豊田社長をトップとする対策本部を設置したことを明らかにした。一方で3分以上飛行したことを前進と捉え「失敗とは捉えていない。失速することなく小型ロケットによる打ち上げサービスに向けてまい進する」と3号機の打ち上げを急ぐ考えを示した。
「かなり進歩」「次に期待」
2回目の挑戦も成功とはならなかったが、地元では前向きに受け止める声が多かった。和歌山県の岸本周平知事は「衛星を軌道に乗せるミッションが達成されなかったという意味では少し残念だが、かなり進歩した。県にとって記念すべき日になった」と評価。有志でつくる和歌山ロケット応援団の青木圭団長(48)は「飛行中断は残念だが、実際打ち上がっている姿を見て、次回に期待したいと思った。今後も地元で上がるロケットを応援していきたい」と話していた。
カイロスはスペースワンが独自開発した固体燃料式の小型ロケットで、全長約18メートル。2号機は京都の新興宇宙企業が開発した重さ約50キロの衛星や、台湾国家宇宙センターの実験用衛星など計5基を積み、地球周回軌道に投入できれば、民間単独としては国内初となるはずだった。【駒木智一、大澤孝二、加藤敦久】