第41回織田作之助賞の選考会が19日、大阪市北区の毎日新聞大阪本社で開かれ、町屋良平さん(41)の「生きる演技」(河出書房新社)が選ばれた。元子役と俳優の男子高校生2人が主人公。ともに複雑な家庭環境で育った2人は仲を深め、文化祭で戦争の惨劇を演じる。「演技」を通して、生きることや暴力を見つめ直す。
記者会見で、選考委員の作家、古川日出男さんは「作品では、地の文に『われわれ』という集合的な意識がなぜか噴出して語り始める。今までになかった小説を町屋さんが試みたのだと思う。新しい文学が始まっているとしたら、その文学史に残る傑作だ」と評した。
町屋さんは2016年、「青が破れる」で文芸賞を受賞しデビュー。19年「1R1分34秒」で芥川賞、22年「ほんのこども」で野間文芸新人賞、24年に「私の批評」で川端康成文学賞を受けた。今回の受賞の知らせに「まだキャリアは浅いものの、自分が今まで書いてきたものの集大成という形で完成させた作品です。一つの大きい区切りとなる作品で歴史ある賞をいただけたことを本当に光栄に感じております」とコメントした。
主催は織田作之助賞実行委員会(大阪市、大阪文学振興会、関西大学、毎日新聞社)、協賛は一心寺、オダサク倶楽部、丸善雄松堂。受賞作は新鋭・気鋭の作家の小説(単行本)を対象にした候補5作品から選ばれた。贈呈式は来年3月6日、大阪市中央区の綿業会館で開かれる。【清水有香、石川将来】