生まれや育った環境に左右されず、街のプレーヤーとして輝いてほしい――。15~20代前半の若い生活困窮者を対象とした自立援助ホームを設立する費用を集めようと、大阪市西成区の認定NPO法人「釜ケ崎支援機構」がクラウドファンディング(CF)を始めた。目標は500万円で、19日夕時点で8割ほど集まった。締め切りは26日。
近年、西成にはインバウンド客が大勢訪れるようになり、観光客用の宿泊サービスや飲食店も増えた。生まれも育ちも西成という支援機構の職員、花岡福さん(27)は「西成に来る若い人も増えてきたが、中には困窮している人もいる」と話す。
支援機構は1999年に設立され、ホームレス状態の人たちら生活困窮者を支援してきた。2020年には22室のワンルームマンションを支援機構で借り上げ、40代までの人をサポートする居住支援を始めた。しかし、入居しても引きこもりがちになるなど、うまくいかないケースもあった。そこで23年からは、共同生活を通じて他者とのコミュニケーションに慣れることを狙ったシェアハウス形式の居住支援も導入した。2種類の居住支援を通じて、現在20人程度を援助しているという。
シェアハウスは、より若い20~30代の人を受け入れるつもりだったが、意外なことに10代の人も支援を求めて来るようになった。親がいなかったり、いたとしても虐待や病気で子どもの面倒をみられなかったり、いろんな境遇の人がいる。そうした若い人の支援を始めると、掃除や洗濯、トイレの使い方、さらに朝起きることなど、他人と一緒に暮らすうえで必要なことが身についていない人がいることも分かってきた。花岡さんは「自らを振り返れば十代ってそういうものですよね。そこでお金の使い方も含め、生活スキルを身につけられる形式の居住支援をすることになった」と話す。
今回、支援機構が始めようとしているのが、24時間体制で支援する「自立援助ホーム」。ホームレス状態の人の過去を聞くと、幼少期の家庭環境や、10~20代のころの生活が孤独だったという人が多いという。支援機構が関わる17歳の男性のケースは、母子家庭で育ってきたが、母親の恋人が一緒に暮らすようになって暴力を振るわれ、近所の人に助けられて保護施設で暮らすことになった。自分の中で学校に行く理由を見つけられず高校は退学。就労して自立したいが、施設の門限などがネックになって仕事を見つける事が難しいという。
自立支援ホームは、厚生労働省の児童自立生活援助事業に定められた「児童自立生活援助事業所Ⅰ型」にあたる。入居人数に応じたスタッフを置き、働き先を見つけたり、生活スキルを身につけたりするのを手助けする。花岡さんは「入所者にはこの街やいろんな人に触れてもらいたい。顔見知りができて、なにかあったら『どうしたん』と言ってくれる人がいる環境ができれば」と考えている。
支援機構は現在あるワンルーム型、シェアハウスに自立援助ホームを加えることによって、早期から充実した支援ができることを目指す。集まった寄付はホームにする建物の改修費や備品類の購入、事業開始3カ月分の人件費などに充てられる。寄付はウェブサイトや振り込みででき、寄付額によって異なる返礼がある。
花岡さんは「ここにたどり着く人にはそれぞれ悩みや困りごとがある。良いことばかりじゃないけど、自分なりの生き方ややりかたを見つける手助けをしたい」と話した。問い合わせは支援機構(06・6630・6060)へ。【矢追健介】