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加藤雅也さん、還暦で右往左往の主人公演じる 映画「KYロック!」

毎日新聞 2024年12月21日 13時15分

 長い時間が本当に過ぎて、何がこの手に残ったろう――。俳優の加藤雅也さんが自身と同じく還暦を迎え、「第二の青春」に右往左往する主人公を演じる映画「KYロック!」が20日から、京阪神の映画館で上映されている。大阪出身の前田多美監督は「自分も40歳になって年を取るのが怖くなったが、年を重ねるのも良いなと思える映画にしたいと思って撮った」と話す。

 主人公・康祐(こうすけ)は外向的なお調子者で、早期退職して仲間とのロックバンド活動に本腰を入れようとする。ところが還暦ライブを前に、生き方や音楽への向き合い方の違いから、コツコツと自分の音楽を続けてきた唯一無二の友人、豊(ゆたか)と決裂の危機に陥ってしまう。果たしてライブは、二人の友情はどうなってしまうのか――。

 映画は加藤さんの還暦記念として2023年に撮影され、俳優人生で初めてというライブで歌うシーンが象徴的に用いられている。俳優の大塚寧々さん、ROLLYさんらに加え、舞台となる広島の地元ミュージシャンがさまざまな役を演じる。全編に彼らの音楽がちりばめられ、方言や美しい街角などと相まって、広島の今が詰まっている。

 前田監督は広島を拠点とし、21年に公開した前作「犬ころたちの唄」は地元ミュージシャンのミカカさんらを主演に、下町風情が魅力的な広島市横川地区などで撮影した。現実とフィクションが入り交じり、広島の街角の魅力を伝える作品として評判を呼んだ。地方で映画を撮ることに力を入れる加藤さんが作品を見て、前田監督に「ミカカさんと共演したい」と連絡したという。

 今作も「まちの雰囲気、匂いや温度を作品に入れたい」と画角にこだわり、観光地やお好み焼きといった広島の象徴的な景色は入れなかった。「どこのまちの人が見ても自分のまちとして見られるようにしたかった。原爆ドームを象徴的に出さなかったのもそう。広島に住んでいても、毎日平和を祈っているわけではない。起きてご飯を食べ、自転車に乗ってという生活の中から、にじみ出てくるものかなと思っている」

 映画は京都市上京区の出町座で20日から、大阪市淀川区のシアターセブンと神戸市中央区の元町映画館で21日から上映される。【矢追健介】

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